補助参加と参加的効力・訴訟告知
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第4章 複雑訴訟 #80/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
保証人が訴えられた——主債務者は他人事でいられるか
図:冒頭事案の関係図
- 債権者A
- 保証人B
- 主債務者C/CはAから借金
- BはCに頼まれて保証人
- AはBだけを訴え保証債務の履行を求める
- Bが負けて払えばBはCに求償
Cさんは、Aさんからお金を借りました。友人のBさんが、Cさんに頼まれて保証人になっています。やがて返済が滞り、AさんはCさんではなく、Bさんだけを訴えて、保証債務の履行を求めました。さて、この裁判は、AさんとBさんの間の話です。Cさんは、当事者ではありません。Cさんは、この裁判を他人事として見ていられるでしょうか。当事者でなくても、無関係とは限りません。Bさんが負けて、Aさんに払ったとします。すると、Bさんは、立て替えた分をCさんに返してくれと求めることができます。これが求償で、民法459条が定めています。つまり、AさんとBさんの裁判の結果は、後でCさんの懐に直結します。他人事どころか、Cさんにとっては、自分のお金の話です。
Cさんのような立場の人が、他人の裁判に加わる仕組みがあります。補助参加です。前に、共同訴訟人の間には当然の補助参加の関係は生じない、助け合うなら補助参加の申出を、と言いました。補助参加は、他人の訴訟に、その人を勝たせるために加わる手続です。今日は、この補助参加を本格的に見ます。持ち帰ってほしいことは5つです。1つめ、補助参加は、自分の請求は掲げず、当事者の一方を勝たせることで自分の利益を守る参加で、参加人は当事者にも判決の名宛人にもならないこと。2つめ、補助参加の利益は、判決が参加人の法的な地位に影響するおそれのことで、友情や経済的な利害では足りないこと。3つめ、参加人の地位には、独立性と従属性の二面があること。4つめ、助けてもらう側の当事者、つまり被参加人が負けたとき、参加人と被参加人の間で、参加的効力が生じること。これは既判力とは3点で違うこと。5つめ、訴訟告知を使えば、参加しなかった人にも、この効力を及ぼせること。ただし、告知すれば当然に及ぶわけではないことです。
補助参加とは何か——42条と43条
図:補助参加の意義の板
- 42条=訴訟の結果について利害関係を有する第三者が当事者の一方を補助するため参加
- 自らの請求は掲げない
- 当事者でも判決の名宛人でもない
- 機能=将来の紛争を防ぐ・一挙に処理・手続保障
- デメリット=複雑化
まず、条文です。
条文民事訴訟法42条
民事訴訟法42条(補助参加) 訴訟の結果について利害関係を有する第三者は、当事者の一方を補助するため、その訴訟に参加することができる。
鍵になる言葉は3つあります。「利害関係」を持つ「第三者」が、「当事者の一方を補助するため」に参加する、という点です。通し事案でいえば、Cさんは、Aさんに対して何も請求しません。Bさんに対して何かを求めるわけでもありません。ただBさんを勝たせるために、Bさんの側に加わります。このとき、Bさんを被参加人、Cさんを補助参加人と呼びます。Aさんは、相手方です。当事者ではないなら、判決の名宛人にもならないんですか。なりません。Cさんに対して、「払え」とも「払わなくてよい」とも、判決は言いません。だから、Cさんが途中で亡くなったとしても、手続は中断しません。当事者ではないからです。この制度の狙いは3つあります。1つめ、当事者になれない第三者を訴訟に登場させて、将来の紛争、ここでは求償の争いを、未然に防げること。2つめ、Aさんの請求も、Bさんの求償も、多くの人が絡む紛争を、一つの裁判の流れで一挙に処理しやすくなること。3つめ、参加する人に、手続に関わる機会、つまり手続保障を与えられることです。
反面もあります。参加人が増えると、訴訟が複雑になり、進みも遅くなります。既存の当事者にとっては、望まない人に入り込まれることにもなります。だから、誰でも入れるのではなく、参加できる人を絞る条件が要ります。それが、あとで見る補助参加の利益です。補助参加は、当事者にならない参加です。当事者になって加わる参加は別にありますが、そちらは別の回で扱います。次に、申出の方式です。
条文民事訴訟法43条
民事訴訟法43条(補助参加の申出) 補助参加の申出は、参加の趣旨及び理由を明らかにして、補助参加により訴訟行為をすべき裁判所にしなければならない。 2 補助参加の申出は、補助参加人としてすることができる訴訟行為とともにすることができる。
1項は、参加の趣旨と理由を明らかにして、申し出ることを求めています。申出先は、「補助参加により訴訟行為をすべき裁判所」です。第一審の裁判所だけとは書いていません。控訴審でも上告審でも、その時点で訴訟が係属している裁判所に申し出ます。2項は、申出と同時に訴訟行為をしてよい、という規定です。たとえば、申出と同時に、攻撃や防御の方法を出す、上訴を提起する、といったことです。参加した後で改めて、ではなく、申出と同時にできます。
補助参加の利益——法律上の利害関係とは
図:補助参加の利益の判断軸の板
- 判例の基準=法律上の利害関係=判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれ
- 判例の場面=株主代表訴訟で会社が取締役側に参加
ここが今日の山場の1つです。先に1問です。Bさんの古い友人のDさんが、「Bさんを助けたい」と、補助参加を申し出ました。Dさんに、補助参加の利益はあるでしょうか。認められません。理由を、条文と判例の順に見ます。42条は、「訴訟の結果について利害関係を有する」と書いています。ところが、判例は、この利害関係に、大事な絞りをかけました。
判例最決平成13・1・30 民集55巻1号30頁
補助参加の利益が争われた事件 民訴法42条所定の補助参加が認められるのは,専ら訴訟の結果につき法律上の利害関係を有する場合に限られ,単に事実上の利害関係を有するにとどまる場合は補助参加は許されない ……そして,法律上の利害関係を有する場合とは,当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいうものと解される。 ……取締役会の意思決定が違法であるとして取締役に対し提起された株主代表訴訟において,株式会社は,特段の事情がない限り,取締役を補助するため訴訟に参加することが許されると解するのが相当である。
条文にない「法律上の」という絞りは、以前からの最高裁の立場です。この決定は、それを受けて、法律上の利害関係とは何かを言い切りました。事実上の利害関係にとどまれば、補助参加は許されない。法律上の利害関係とは、判決が参加人の法的な地位や法的な利益に影響するおそれがある場合のことです。ただし、この事案は、Bさんたちの図とは別の場面です。株主が、会社の取締役たちに損害賠償を求めた株主代表訴訟で、会社が、被告になった取締役側に補助参加を申し出ました。株主が異議を述べ、原審は補助参加を認めませんでしたが、最高裁は、これを破棄して、許しました。反対意見もあった判断です。最高裁が挙げた許す理由のうち、訴訟運営に関するものは、こうです。補助参加を認めても、株主の利益を害する補助参加がされて公正で妥当な訴訟運営が損なわれるとまではいえない。著しい訴訟の遅延や複雑化を招くおそれはない。会社側から訴訟資料や証拠資料が出されて、審理が充実する利点もある。
決定が言っているのは、取締役会の意思決定が違法だとして取締役に対する請求が認められれば、その意思決定を前提に形づくられた会社の法的な地位や法的な利益に、影響するおそれがある、というところまでです。線は消えていません。会社の法的地位に響くという点が、許す理由の中心です。
図:補助参加の利益の判断軸の板
- Cさん=保証債務の存否が求償権の論理的前提=利益あり
- Dさん=友情=事実上・感情
- Eさん=別の債権者の経済的利害=事実上
- 軸=訴訟物の判断が参加人と一方当事者の権利関係の論理的前提か
では、通し事案に戻ります。Dさんは、Bさんを助けたいという感情があるだけです。AさんとBさんの裁判の判決は、Dさんの権利や義務を、何も変えません。だから、補助参加の利益はありません。もう1人、出します。Bさんの別の債権者のEさんが、「Bさんが負けて払うと、Bさんの財産が減って、私の回収が危うくなる」と申し出ました。これはどうでしょう。Bさんが払えば、Bさんの財産が減るのは事実です。しかし、Eさんが持つBさんへの債権は、判決で増えも減りもしません。経済的な利害は、事実上の利害にとどまります。対してCさんはどうでしょう。AさんとBさんの裁判で、保証債務があるかどうかの判断が示されます。その判断が、BさんのCさんに対する求償権の存否の、論理的な前提になっています。保証債務がなければ、求償するものがないからです。判決が、Cさんの法的な地位に直結します。だからCさんには、補助参加の利益があります。境界線をまとめます。基本となる軸は、この裁判の訴訟物についての判断が、実体法の上で、参加を申し出る人と一方の当事者の間の権利関係の、論理的な前提になっているか、です。前提になっているCさんは認められ、前提にならないDさんとEさんは認められません。
図:訴訟の結果とは何かの板
- 主文の判断に限るか
- 主文を導くのに欠かせない理由中の判断も含むか=近時の有力説
- 裁判例は分かれる
- Cさんはどちらでも利益あり
論点は、もう1つあります。条文の「訴訟の結果」とは何か、です。主文で示される判断、つまり訴訟物である権利関係の存否に限るのか。それとも、主文を導くのに欠かせない理由の中の判断、たとえば事実や法律関係の存否も含むのか。最近は、後者を含めるという有力な考え方があります。裁判例は分かれています。通し事案のCさんは、主文の保証債務の存否そのものが前提ですから、どちらの見方でも認められます。試験では、この線引きを、当てはめの中で示すことになります。ここは論文で論点になりうる、と押さえておきます。もう1つ気になります。裁判所は、補助参加の利益があるかを、毎回調べるんですか。調べません。ここは間違えやすいところです。
条文民事訴訟法44条
民事訴訟法44条(補助参加についての異議等) 当事者が補助参加について異議を述べたときは、裁判所は、補助参加の許否について、決定で、裁判をする。この場合においては、補助参加人は、参加の理由を疎明しなければならない。 2 前項の異議は、当事者がこれを述べないで弁論をし、又は弁論準備手続において申述をした後は、述べることができない。 3 第一項の裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
図:異議と補助参加の利益の板
- 職権調査事項ではない
- 当事者の異議→決定で裁判・参加人は理由を疎明
- 異議の時期の限界
- 即時抗告
補助参加の利益は、職権調査事項ではありません。当事者が異議を述べたときに限って、裁判所が決定で、参加を許すかどうかを裁判します。この場合、参加人は、理由を疎明します。疎明は、確からしいと思わせる程度の立証です。異議は、異議を述べないまま弁論をしたり、弁論準備手続で申述をした後は、もう述べられません。許否の裁判に対しては、即時抗告ができます。つまり、Aさんが黙っている限り、Dさんが入ってきても、裁判所は補助参加の利益を問題にしません。補助参加の申出の場面では、利益があるかが実際に争われるのは、当事者が異議を述べたときに限られます。補助参加の利益は、望まない人に入り込まれないという、当事者の利益を守るための絞りでした。だから、当事者が異議を述べない限り、裁判所が先回りして調べることはしないのです。整理します。1つ、補助参加の利益は、判決が参加人の法的地位に影響するおそれのこと。2つ、感情や経済的な利害は、事実上の利害にとどまり、足りない。3つ、審査されるのは、当事者が異議を述べたときだけ。この3つです。
補助参加人の地位——独立性と従属性
図:二面性の板
- 独立性=45条1項本文=一切の訴訟行為ができる・期日の呼出しや送達は別個に行う
- 従属性=(1)参加時の訴訟の程度に従う(2)訴訟自体を処分する行為はできない(3)被参加人の訴訟行為と抵触すれば効力なし45条2項
- 欄外=45条3項は異議があっても不許の裁判の確定までは訴訟行為ができる
- 4項は不許が確定してもそれまでの行為は当事者の援用で効力を持つ
参加できたとして、次は、Cさんが参加した後で、何ができるかです。その前に1問です。裁判上の自白が成立すると、自白した当事者は、その事実についてどうなりますか?自白した事実は、証明が要らなくなって、後から撤回して争うことも、原則としてできなくなります。この自白が、Cさんの地位を考えるときに出てきます。まず、条文です。
条文民事訴訟法45条1項・2項
民事訴訟法45条(補助参加人の訴訟行為)第1項・第2項 補助参加人は、訴訟について、攻撃又は防御の方法の提出、異議の申立て、上訴の提起、再審の訴えの提起その他一切の訴訟行為をすることができる。ただし、補助参加の時における訴訟の程度に従いすることができないものは、この限りでない。 2 補助参加人の訴訟行為は、被参加人の訴訟行為と抵触するときは、その効力を有しない。
補助参加人の地位には、2つの顔があります。まず独立性です。1項本文のとおり、補助参加人は、攻撃防御の方法の提出も、異議の申立ても、上訴も、再審の訴えも、一切の訴訟行為ができます。期日の呼出しや書類の送達も、被参加人とは別に、補助参加人に対して行われます。Cさんは、Bさんの言いなりではありません。次に、従属性です。Cさんは、自分の請求を掲げない、あくまで被参加人を勝たせるための参加人です。そのため、次の3つの限界があります。1つめ、参加した時点の訴訟の程度に従います。1項ただし書です。たとえば、Cさんが控訴審になってから参加したとします。Cさんは、第一審からやり直してもらうことはできず、今の段階から加わるしかありません。Bさんがもう出せなくなった主張は、Cさんも出せません。2つめ、訴訟自体を処分する行為はできません。訴えの取下げ、請求の放棄や認諾、訴訟上の和解です。これは、条文の言葉ではなく、補助参加人が被参加人を勝たせる立場にあるという趣旨からの結論です。裁判の主人はBさんで、Cさんが勝手に幕引きをすることはできません。3つめ、被参加人の訴訟行為と抵触する行為は、効力を有しません。2項です。Bさんが「CさんがAさんからお金を借りた事実はある」と認めたとします。Bさんの自白が成立すれば、Cさんは、「自分は借りていない」と主張できません。Cさんが出した証拠の申出を、Bさんが取り消すこともできます。二人の行為が食い違えば、裁判の主人であるBさんの行為が優先するからです。
Bさんが弱気になって、和解しようとしたら、Cさんは止められないんですか。止められません。和解するかどうかは、被参加人が決めることです。Cさんは、Bさんの意思に反する和解を、自分でしたり、止めたりはできないのです。補助参加人は、被参加人と食い違う訴訟行為はできない立場にあります。補足です。45条3項は、異議が出ても、参加を許さない裁判が確定するまでは、補助参加人は訴訟行為ができる、という規定です。4項は、参加を許さない裁判が確定しても、それまでの補助参加人の訴訟行為は、当事者が援用すれば効力を持つ、という規定です。この従属性は、次の参加的効力の例外を理解する鍵になります。頭の片隅に置いておいてください。
参加的効力——負けたとき、責任を分け合う
図:参加的効力の板
- 通し事案=Bが負けて確定→BのCへの求償訴訟でCは主債務は無かったと争えない
- 効く相手=BとCの間だけ・AとCの間には生じない
- 根拠=敗訴の責任を参加人にも分担させるのが衡平
先に1問です。AさんとBさんの裁判で、Bさんが勝ちました。このとき、BさんとCさんの間で、参加的効力は問題になるでしょうか。Bさんが勝ったなら、求償の話も起きないので、問題にならないと思います。参加的効力は、被参加人が敗訴したときにだけ問題になります。もう1問、既判力の回を思い出す確認です。既判力は、判決のどの部分に、誰と誰の間で生じますか?主文の判断に、当事者の間で生じます。この既判力との違いを、あとで対比表で確認します。まず条文です。
条文民事訴訟法46条
民事訴訟法46条(補助参加人に対する裁判の効力) 補助参加に係る訴訟の裁判は、次に掲げる場合を除き、補助参加人に対してもその効力を有する。 一 前条第一項ただし書の規定により補助参加人が訴訟行為をすることができなかったとき。 二 前条第二項の規定により補助参加人の訴訟行為が効力を有しなかったとき。 三 被参加人が補助参加人の訴訟行為を妨げたとき。 四 被参加人が補助参加人のすることができない訴訟行為を故意又は過失によってしなかったとき。
通し事案で言います。Bさんが負けて確定しました。BさんがCさんに求償の訴えを起こしたとき、Cさんは、「そもそも主債務は無かった」とは争えません。前の裁判の判断に、逆らえないのです。既判力のような気がしますが、違うんですか。違います。判例は、この効力を、既判力ではなく、それとは異なる特殊な効力だとしました。参加的効力と呼ばれます。
判例最判昭和45・10・22 民集24巻11号1583頁
補助参加人に対する判決の効力が争われた事件 この効力は、いわゆる既判力ではなく、それとは異なる特殊な効力、すなわち、判決の確定後補助参加人が被参加人に対してその判決が不当であると主張することを禁ずる効力であつて、判決の主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけではなく、その前提として判決の理由中でなされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断などにも及ぶものと解するのが相当である。 ……補助参加人が被参加人の訴訟の追行に現実に協力し、または、これに協力しえたにもかかわらず、被参加人が敗訴の確定判決を受けるに至つたときには、その敗訴の責任はあらゆる点で補助参加人にも分担させるのが衡平にかなうというべきである
判旨の中の、この効力とは、当時の民訴70条、今の46条の効力のことです。判旨の先決的権利関係とは、結論を出す前提として、先に判断しておく必要がある権利関係のことです。
図:判例の事案の関係図
- 判例の場面=通し事案とは別
- 貸主=賃貸人
- 借り主=賃借人
- 建物の所有者を名乗る会社
- 会社が借り主に貸室の明渡しを請求した前訴で貸主は借り主側に補助参加
- 借り主が敗訴確定
- 後訴=貸主は貸した当時の所有権が自分にあったと主張できない
判例の事案は、Bさんたちとは別の場面です。建物の所有者を名乗る会社が、借り主に、貸室の明渡しなどを求める裁判を起こしました。建物を貸していた貸主は、借り主の側に補助参加して、「貸した当時、所有権は自分にあった」と主張して争いました。ところが借り主は、全部負けて確定しました。理由は、所有権は会社にあって、貸主にはなかったから、というものでした。その後の裁判で、貸主は、「貸した当時、所有権は自分にあった」と主張することを許されない、とされました。前の裁判で負けた側に付いて争った以上、その判断を蒸し返せない、ということです。判例が挙げた根拠は、こうです。参加人が、被参加人の訴訟追行に協力したか、協力できたのに、被参加人が負けたときは、敗訴の責任を参加人にも分担させるのが衡平だ、というものです。一緒に戦ったのなら、負けた責任も一緒に分ける。これが参加的効力の考え方です。既判力との違いを、3点で整理します。
図:既判力と参加的効力の対比表
- いつ=既判力は判決確定で勝敗を問わない
- 参加的効力は被参加人が敗訴したときに限る
- 誰と誰=既判力は当事者間115条
- 参加的効力は参加人と被参加人の間だけ
- どの部分=既判力は主文の判断114条1項
- 参加的効力は主文を導く理由中の判断にも及ぶ
- 加えて46条各号の場合は生じない
1点め、いつ生じるか。既判力は、判決が確定すれば、勝ち負けを問わず生じます。参加的効力は、被参加人が負けたときに限ります。2点め、誰と誰の間か。既判力は、当事者の間です。参加的効力は、参加人と被参加人の間だけです。3点め、どの部分か。既判力は、主文の判断に生じます。参加的効力は、主文を導く理由中の判断にも及びます。事実の認定や、先に決まる権利関係の判断も、含まれます。負けた原因が理由の中の判断にあるなら、その判断を蒸し返せるのでは、責任を分け合ったことになりません。ただし、理由中の判断といっても、主文を導くために必要な主要事実の認定や法律判断などをいい、結論に影響しない傍論には及びません。この点は、あとで判例を見ます。既判力の客観的範囲の回で、理由中の判断に既判力が生じないのは、そこが訴訟物ほど本気で争うことを強制されていない部分だから、と見ました。参加的効力は、根拠が敗訴の責任の分け合いなので、負けた原因である理由中の判断にも及ぶのです。「誰と誰の間か」は、間違えやすいので、繰り返します。効くのは、参加人のCさんと被参加人のBさんの間だけです。相手方のAさんとCさんの間には、生じないと理解されています。なぜ、BさんとCさんの間だけなのか。根拠が、敗訴の責任を分け合うことだからです。責任を分け合うのは、一緒に戦ったBさんとCさんの間で、戦った相手のAさんとの間の話ではありません。判旨も、参加人が被参加人に対して判決が不当だと主張することを禁ずる効力、と述べています。
ただし、学説には、別の見方もあります。46条の効力の根拠を、既判力と同様に、手続に加わる機会が保障されたことに求めます。その上で、参加人が被参加人と並んで相手方と実際に争ったのなら、公平の観点から、相手方との間にも効力が及ぶとします。一般的な理解は、被参加人との間だけです。この見方は、学説として知っておく程度で足ります。丸覚えは要りません。46条各号の除外は、従属性の裏返しとして読めます。1号は、参加の時点の訴訟の程度に従うので、できなかった行為があった場合です。2号は、被参加人の行為と抵触して、効力が生じなかった場合です。3号は、被参加人が参加人の訴訟行為を妨げた場合です。4号は、被参加人が、参加人ができない行為を、うっかり、または故意でしなかった場合です。どれも、参加人が思うように戦えなかった事情です。思うように戦えなかったなら、負けの責任は分けられません。まとめます。参加的効力は、既判力ではありません。被参加人が負けたときに、参加人と被参加人の間で、理由中の判断にも生じ、思うように戦えなかった事情があれば生じません。ここは論文で論点になりうる、と押さえておきます。
訴訟告知——参加しない人にも効力を及ぼす
図:訴訟告知の流れ図
- Bが告知者=訴訟の係属を知らせる
- 被告知者C=参加した場合46条の効力
- 参加しなかった場合もBが敗訴すれば参加できた時に参加したものとみなす53条4項
- 告知の向き=B→C
最後に、訴訟告知です。通し事案に戻ります。Cさんが、AさんとBさんの裁判に参加しなかったとします。Bさんが負けて、Cさんに求償しても、参加していないのだから、Cさんは前の裁判の判断に縛られません。Cさんは、「主債務は無かった」と、最初から争い直せます。そこで使えるのが、訴訟告知です。訴訟告知は前に、債権者が債務者に代わって訴える債権者代位訴訟で出てきました。訴訟に出てこない債務者にも既判力を及ぼすには告知が要る、というのが学説の多数でした。今日見るのは、告知そのものが生む効果で、それは既判力ではなく、参加的効力です。条文を見ます。
条文民事訴訟法53条
民事訴訟法53条(訴訟告知) 当事者は、訴訟の係属中、参加することができる第三者にその訴訟の告知をすることができる。 2 訴訟告知を受けた者は、更に訴訟告知をすることができる。 3 訴訟告知は、その理由及び訴訟の程度を記載した書面を裁判所に提出してしなければならない。 4 訴訟告知を受けた者が参加しなかった場合においても、第四十六条の規定の適用については、参加することができた時に参加したものとみなす。
告知をするのは、当事者です。告知者と呼びます。通し事案では、Bさんです。告知を受ける人を被告知者と呼び、Cさんです。向きを取り違えないでください。告知は、当事者のBさんから、Cさんへ、です。2項は、告知を受けたCさんが、さらに別の人へ告知できる、という規定です。手続は、3項のとおり、理由と訴訟の程度を書いた書面を、裁判所に提出します。実務では、裁判所は、要件を事前に審査せず、送達します。訴訟告知には、2つの機能があります。1つめは、被告知者に、参加の機会を与えることです。自分の利益を守る機会になります。2つめは、告知者を守る機能です。被告知者が参加すれば、告知者は援助を得られます。参加しなくても、告知者が敗訴すれば、被告知者との間に参加的効力を生じさせられます。被告知者に参加する義務はありませんから、実際に働くのはこの2つめが中心です。訴訟告知は、告知者のための制度だといえます。効果は、4項です。被告知者は、告知で当然に参加したことにはなりません。参加するかしないか、どちらの側に参加するかは、被告知者が自分で決めます。しかし、補助参加の利益がある被告知者には、参加しなくても、告知者が負ければ、「参加することができた時に参加したもの」とみなされ、46条の効力が及びます。通し事案でいえば、Bさんは、Cさんに訴訟告知をしておきます。Cさんが参加しなくても、Bさんが負けたら、BさんとCさんの間で、参加的効力が生じます。BさんがCさんに求償したとき、Cさんは、「主債務は無かった」とは争えません。
告知しておけば、必ず効力が及ぶんですか。及びません。ここが訴訟告知の大事なところです。「参加することができる第三者」に当たるのか、補助参加の利益があるのかは、告知をした時ではなく、後の裁判、つまり参加的効力が問題になる場面で審査されます。判例も、補助参加の利益があることを前提にしています。
図:平14の事案の関係図
- 通し事案とは別の場面
- 売主・業者・施主
- 前訴=売主→業者の代金請求・売主が施主に告知・施主は参加せず・請求棄却確定・理由中に施主が買い受けた
- 後訴=売主→施主の代金請求
判例の事案は、また別の場面です。告知者は、前の裁判の原告の売主です。登場するのは3人です。家具などを売った売主、店舗の新築工事を請け負った業者、そして工事を頼んだ店の持ち主、つまり施主です。売主は、家具の買主は業者だとして、業者に残代金を求める裁判を起こしました。業者は、「買ったのは自分ではなく、施主だ」と主張しました。前の裁判の争いは、業者が買主かどうか、です。そこで売主は、その施主に訴訟告知をしましたが、施主は参加しませんでした。前の裁判は、売主の請求を棄却して確定し、理由の中に、「施主が買い受けたことが認められる」という記載がありました。売主は、その施主に、代金を請求しました。原審は、告知の効力を認めましたが、最高裁は、これを破棄して差し戻しました。
判例最判平成14・1・22 集民205号93頁
訴訟告知を受けた者に判決の効力が及ぶかが争われた事件 旧民訴法78条,70条の規定により裁判が訴訟告知を受けたが参加しなかった者に対しても効力を有するのは,訴訟告知を受けた者が同法64条にいう訴訟の結果につき法律上の利害関係を有する場合に限られる ……この判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断とは,判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断などをいうものであって,これに当たらない事実又は論点について示された認定や法律判断を含むものではないと解される。 ……その他,旧民訴法70条所定の効力が,判決の結論に影響のない傍論において示された事実の認定や法律判断に及ぶものと解すべき理由はない。
判旨の中の旧78条と旧70条は、今の53条4項と46条です。旧64条は、今の42条にあたります。最高裁の判断は、2つです。1つめ、告知の効力が及ぶのは、被告知者に、訴訟の結果につき法律上の利害関係がある場合だけです。前の裁判の結果で、施主の支払義務の有無が決まる関係にはないので、利害関係はなく、告知を受けても効力は及ばない。2つめ、施主が買い受けたという記載は、主文を導くために必要な判断ではない、傍論での認定にすぎず、その点でも効力が及んだとはいえない。なぜ、法律上の利害関係が要るのでしょう。4項は、参加することができた時に参加したものとみなす、という規定です。もともと参加できない人、つまり補助参加の利益がない人には、みなす土台がありません。条文の組み立てから、こう読めます。この事案に当てはめます。前の裁判で決まるのは、業者が買主かどうか、までです。業者が買主でないと決まっても、それで施主が買主だと決まるわけではありません。だから、前の裁判の結果は、施主の支払義務を左右しません。施主は、告知を受けても、自分の法的な地位がかかった立場ではなかったのです。
図:告知の効力が及ぶ範囲の板
- 判例=補助参加の利益(法律上の利害関係)が前提・傍論には及ばない
- 学説の一部=さらに告知者の敗訴を直接の原因とする求償・賠償の実体関係
- 相手方側に参加=生じないと考えられている・直接の判例なし
- 判断の順序1〜4
告知の効力が及ぶ条件について、判例は、補助参加の利益があることまでを求めています。学説には、さらに一歩進めて、告知者が負けたことを直接の原因として、求償や賠償を求められる関係まで要る、とする考え方もあります。補助参加の利益より、範囲を狭く絞る見方です。そうした関係にある被告知者なら、告知者に協力するのが当然だ、と言えるからだと考えられています。通し事案のCさんは、BさんからCさんへの求償という関係もあるので、どちらの立場でも当てはまります。最後に、相手方の側に参加した場合です。通し事案のCさんには考えにくい動きですが、仮に、告知を受けたCさんが、Bさんではなく、Aさんの側に参加したとします。そうすると、BさんとCさんの間には利害の対立があります。Cさんは、Bさんの訴訟追行に協力することを期待できません。だから、参加的効力を及ぼす正当化の根拠がなく、効力は生じないと考えられています。この点を直接判断した判例は、ありません。整理します。効力を及ぼしたいのは、負ける側の告知者です。判例の線での判断の順序は、1つ、補助参加の利益があるか。2つ、告知者が負けたか。3つ、被告知者が告知者の側に加わる立場か。4つ、傍論ではなく、主文を導く判断か、です。実体関係まで要るという考え方に立つなら、1つめの段階で、求償や賠償の関係があるかを追加で見ます。
今日の地図(保存版)
図:総括の板
- 補助参加=自分の請求は掲げずBを勝たせて自分の利益を守る・当事者でも名宛人でもない
- 利益=判決が法的地位に影響するおそれ・友情や経済的利害は不可・異議があったときだけ審査
- 地位=独立性と従属性
- 参加的効力=Bが負けたとき・BとCの間だけ・理由中の判断にも・思うように戦えなかったら生じない=既判力と3点違う
- 訴訟告知=Bが告知すればCが参加しなくても及ぶ・補助参加の利益が前提
まとめます。冒頭の、AさんとBさんとCさんに戻ります。Cさんは、他人事ではいられません。Bさんが負ければ、Cさんに求償が来るからです。1つめ、補助参加は、自分の請求は掲げず、当事者の一方を勝たせることで自分の利益を守る参加です。参加人は、当事者でも判決の名宛人でもありません。2つめ、補助参加の利益は、判決が参加人の法的な地位に影響するおそれです。友情や経済的な利害は、事実上の利害で、足りません。審査されるのは、当事者が異議を述べたときだけです。3つめ、参加人には、独立性と従属性があります。一切の訴訟行為ができますが、訴訟自体は処分できず、被参加人の行為と食い違う行為は効力がありません。4つめ、被参加人が負けたとき、参加人と被参加人の間で、理由中の判断にも参加的効力が生じます。これは、既判力ではありません。いつ、誰と誰の間か、どの部分か、の3点で違います。思うように戦えなかった事情があれば、生じません。5つめ、参加しない人にも、Bさんが訴訟告知をすれば、参加的効力を及ぼせます。ただし、補助参加の利益がなければ及びません。相手方の側に参加した場合は、生じないと考えられています。試験では、まず、参加の申出の場面か、告知の場面かを分けてください。そのうえで、誰が誰の側に、誰が誰に告知するのかを固定して、効力が誰と誰の間で生じるかを言い切ってください。
参照条文
- 民事訴訟法42条
- 民事訴訟法43条
- 民事訴訟法44条
- 民事訴訟法45条1項・2項
- 民事訴訟法46条
- 民事訴訟法53条