独立当事者参加(詐害防止参加・権利主張参加)
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第4章 複雑訴訟 #81/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
建物は自分のものだ——傍観するしかないのか
図:冒頭事案の関係図
- 原告A
- 被告B
- 参加人C/AはBに所有権に基づいて建物の明渡しを請求
- Cは「その建物は自分が買った物だ」と考えている
Aさんが、Bさんを訴えました。「Bさんが使っている建物は私の物だ。明け渡してください」という、所有権に基づく明渡しの請求です。ところが、その建物を買ったのは、Cさんでした。Cさんは、Aさんの物だとも、Bさんの物だとも思っていません。自分が所有者だと考えています。判決が出たあとで、別の裁判を起こす道は残ります。それで間に合うでしょうか。Aさんが勝ち、Bさんが建物を出て、建物がAさんの手に渡ったあとで、CさんがAさんを訴えたとします。建物はもう動いています。しかも、同じ建物について、Aさんが所有者だという裁判と、Cさんが所有者だという裁判が、別々に並ぶおそれがあります。
前回の補助参加は使えるでしょうか。補助参加は、自分の請求は掲げず、当事者の一方を勝たせることで自分の利益を守る参加でした。参加人は、当事者でも判決の名宛人でもありませんでした。けれども、Cさんが欲しいのは、Bさんの勝利ではありません。自分が所有者だと認めてもらうことです。そこで今日は、自分の請求を掲げて、当事者になる参加を見ます。独立当事者参加です。持ち帰ってほしいことは5つです。1つめ、当事者になる参加には2種類あり、独立当事者参加は、3人が互いに向き合う三面の訴訟になること。2つめ、判例はこの制度を合一確定のためと説明するが、元の判決の効力が参加人に及ぶという意味ではないこと。3つめ、47条1項の前段は詐害防止参加、後段は権利主張参加で、見分け方があること。4つめ、権利主張参加では、参加人の請求と原告の請求が両立しないことが必要で、二重譲渡と債権者代位の場面でそれが問題になること。5つめ、申出の手続と片面的参加、そして要件を欠いたときの扱いです。
当事者になる参加の2つの形——三面訴訟とは
図:当事者参加の2形態の板
- 当事者参加=第三者が係属中の他人間の訴訟に当事者として加わる
- 47条=独立の当事者として参加
- 52条=原告又は被告と並んで共同訴訟人として参加
- 補助参加との対比=補助参加は請求を掲げない・当事者でない
- 独立当事者参加は請求を掲げる・当事者
- 三面=AとB・CとA・CとBの3本の線
先に確認です。前回の補助参加人は、当事者でしょうか。判決の名宛人でしょうか?どちらでもありません。自分の請求は掲げず、当事者の一方を勝たせるために加わる立場でした。今日の参加人は、その反対です。第三者が、係属中の他人同士の訴訟に、当事者として加わる。これを当事者参加と呼びます。当事者参加には2つの形があります。1つは、独立の当事者として加わる形で、47条が定めます。これが今日の主役です。もう1つは、原告や被告と並んで、共同訴訟人として加わる形で、52条が定めます。こちらは、別の回で扱います。独立当事者参加では、通し事案のAさん、Bさん、Cさんが、互いに向き合います。AさんとBさんの間の請求があり、CさんはAさんに請求を立て、Bさんにも請求を立てます。線が3本になるので、三面訴訟と呼ばれます。
二当事者対立構造が基本です。独立当事者参加は、その例外です。3人が互いに牽制し合いながら、1つの手続で紛争を調整します。ここで、判例の説明を見ておきます。判例は、この制度を、三者が互いに争う紛争を一挙に矛盾なく解決し、権利関係を全員につき合一に確定することを目的とする、と説明します。合一に確定するとは、必要的共同訴訟の回でも出てきた言葉で、全員について同じ結論を出す、ということです。合一に確定するなら、AさんとBさんの判決が、Cさんにも効くということですか。そこが大事な区別です。合一確定を目的とする、という説明と、元の判決の効力が参加人に及ぶ、という話は、別のことです。確定判決の効力は、原則として当事者の間にだけ生じます。115条1項1号です。AさんとBさんの判決は、Cさんには及びません。Cさんが別の裁判でAさんと争うこと自体も、禁じられてはいません。
なぜわざわざ参加を認めるんですか。3人を1つの手続に乗せれば、矛盾した判断が出るのを防げますし、3人が調整する機会も得られるからです。学説には、この制度は合一確定という本質的な要請に根ざしたものではなく、統一的な解決が要るかどうかは、紛争の性質に応じて決めれば足りる、とみる見方があります。ここから、今日の全体の筋が見えてきます。別の裁判でも争えるのなら、三面訴訟に入れる必要があるのは、どんな第三者なのか。入口の要件で、誰を入れるかを絞っているのです。参加人が増えると訴訟が複雑になり、進みも遅くなるのは、前回の補助参加で見たとおりです。
47条1項の2つの入口——前段と後段
図:47条1項の見分けの板
- 前段=訴訟の結果によって権利が害されることを主張する第三者=詐害防止参加
- 後段=訴訟の目的の全部若しくは一部が自己の権利であることを主張する第三者=権利主張参加
- 見分け方=害されるのを防ぐか・自分のものだと主張するか
- 当事者の双方又は一方を相手方として
条文を見ます。
条文民事訴訟法47条
民事訴訟法47条(独立当事者参加) 訴訟の結果によって権利が害されることを主張する第三者又は訴訟の目的の全部若しくは一部が自己の権利であることを主張する第三者は、その訴訟の当事者の双方又は一方を相手方として、当事者としてその訴訟に参加することができる。 2 前項の規定による参加の申出は、書面でしなければならない。 3 前項の書面は、当事者双方に送達しなければならない。 4 第四十条第一項から第三項までの規定は第一項の訴訟の当事者及び同項の規定によりその訴訟に参加した者について、第四十三条の規定は同項の規定による参加の申出について準用する。
1項には、入口が2つあります。前半の「訴訟の結果によって権利が害されることを主張する第三者」が、前段です。詐害防止参加と呼びます。後半の「訴訟の目的の全部若しくは一部が自己の権利であることを主張する第三者」が、後段です。権利主張参加と呼びます。見分け方は簡単です。他人の裁判で自分が害されるのを防ぎたいなら、前段の詐害防止参加。訴訟の目的そのものが自分の権利だと言いたいなら、後段の権利主張参加です。前段は詐害防止、後段は権利主張、と取り違えないでください。条文には、あと2つ拾っておきたい言葉があります。1つは、「当事者の双方又は一方を相手方として」です。双方に請求を立てなくてもよい、という意味で、あとで片面的参加として戻ってきます。もう1つは、4項です。40条1項から3項を準用していますが、その中身は、参加したあと3人をどう裁くかの話なので、次の回で扱います。今日は、入口だけです。
詐害防止参加——馴れ合いを防ぐ
図:詐害防止参加の設例と2つの問いの板
- 設例=原告A(土地の所有者)・被告B(土地上の建物の所有者)・参加人C(Bから建物を借りて住む借主)
- AはBに建物を取り壊して土地を明け渡すよう請求・Bはほとんど争わない
- CはAを相手方にAの請求を認めない判決を求める
- 問い1=害されると主張する者の地位・利益(実体面)
- 問い2=当事者の詐害的な訴訟追行(手続面)
設例を変えます。役割を言い直します。Aさんは原告、Bさんは被告、Cさんは参加人で、並びは同じですが、中身が違います。Aさんは、自分の土地の上にBさんが建物を建てて使っているとして、Bさんに、建物を取り壊して土地を明け渡すよう求めています。ところが、Bさんはほとんど争わず、期日にも出てきません。Cさんは、その建物をBさんから借りて住んでいる借主です。Aさんの請求が通ると、建物は取り壊され、Cさんは住まいを失います。Cさんは、Aさんを相手方にして、Aさんの請求を認めない判決を求めて参加します。Bさんとは争っていないので、相手方はAさんだけです。これが、前段の詐害防止参加です。
趣旨は、当事者同士の馴れ合い訴訟の防止です。AさんとBさんの判決の効力は、Cさんには及びませんが、それでもCさんは事実上、不利益を受けます。判決が確定してからでは遅いので、確定の前に、自分で手続に入れるようにしたのです。「馴れ合いだ」と言えば、誰でも入れるんですか。入れません。問われるのは、2つです。1つめは、害されると主張する第三者の側の、地位や利益です。実体面です。2つめは、当事者の側の、詐害的な訴訟追行です。Bさんが争わない、期日に出ない、といった手続面です。詐害防止参加の判断基準は、詐害の意思を重く見るか、権利侵害の事実を重く見るかなど、学説が分かれています。試験の重心は、次の権利主張参加にあります。ここでは、実体面と手続面の2つの問いがある、と押さえておいてください。
権利主張参加の規範——請求が両立しないこと
図:権利主張参加の規範の板
- 通し事案=原告A・被告B・参加人C/Aの請求=所有権に基づく建物明渡し
- Cが立てる請求=Aに所有権確認・Bに所有権に基づく明渡し
- 規範=本訴の請求と論理的に両立しえない請求を参加人が立てていること
- 両立しえない=どちらか一方が認められれば他方は認められない
ここから、今日の山場です。冒頭の通し事案に戻ります。Aさんは原告、Bさんは被告、Cさんは参加人です。Aさんは、「建物は私の物だ」として、Bさんに明渡しを求めています。先に1問です。Cさんが「建物は自分の物だ」と言って参加するとき、Aさんに対しては、どんな請求を立てるでしょうか。Bさんに対しては、どんな請求を立てるでしょうか?Aさんには、建物は自分の物だと確認してもらう、所有権確認ですね。Bさんには、所有者として、建物を明け渡してもらう請求だと思います。Aさんに所有権確認、Bさんに明渡しを、それぞれ請求します。相手方がAさんとBさんの両方なので、線が3本の三面になります。では、Cさんが入れる理由は何でしょうか。Aさんは、「建物は私の物」と言います。Cさんは、「建物は私の物」と言います。この2つは、同時に成り立ちません。Aさんの請求が認められるなら、Cさんの請求は認められず、Cさんが認められるなら、Aさんは負けます。ここが権利主張参加の核心です。
⭐ 論文で書く規範:権利主張参加が認められる条件 権利主張参加が認められるには、本訴の請求と論理的に両立しえない請求を、参加人が立てていることが必要である。 (規範(47条1項後段の文言の解釈で立てる))
この条件は、条文には書いてありません。「訴訟の目的の全部若しくは一部が自己の権利であることを主張する」という文言を解釈して立てたものです。だから、言葉のとおりに覚えるべき規範です。理由は、この参加が、訴訟の目的についての権利に関する3人の法律関係を、矛盾なく解決するための制度だからです。請求が両立するなら、別々の裁判で両方が認められても、判断はぶつかりません。ぶつかるおそれがあるのは、一方が認められれば他方が認められない、両立しない請求のときだけです。だから、そういう第三者に限って、三面訴訟に入れるのです。
反対の例を出します。たとえば、Cさんが、Bさんに貸したお金を返せ、という別の請求を持って入ろうとしたとします。この請求は、Aさんの明渡請求が認められても認められなくても、並んで成り立ちます。同時に認められうる関係、つまり両立します。これでは、建物の所有を巡る3人の争いにはなりません。請求が両立するかどうかの境目が本当に問題になるのは、次の2つの場面です。不動産の二重譲渡と、債権者代位訴訟です。
両立性その1——不動産の二重譲渡
図:二重譲渡の関係図
- 原告A=売主から買った買主
- 被告B=売主
- 参加人C=同じ土地を売主から買った(買う予約をした)買主
- AはBに売買による所有権移転登記手続を請求
- CはBに本登記手続・Aに本登記の承諾を請求(所有権確認は求めていない)
- Aに所有権確認も求める形は判決が直接判断していない
役割を言い直します。Aさんは、Bさんから土地を買った買主で、原告です。Bさんは、売主で、被告です。Cさんは、同じ土地をBさんから買った、あるいは、買う予約をした買主で、参加人です。Aさんは、Bさんに、売買による所有権移転登記を求めて訴えました。そこにCさんが、「自分もBさんから買った」と参加できるか。これが問われました。判例の事案です。Aさんの訴えは、第一審で認められ、Bさんが控訴しました。控訴審の途中で、Cさんが参加を申し出ました。Cさんは、Bさんに対して、仮登記に基づく本登記の手続を求め、Aさんに対して、その本登記についての承諾を求めました。仮登記とは、将来の本登記に備えて、順位を確保しておく登記です。Aさんは、Cさんの仮登記のあとに、この土地の処分を禁じる仮処分の登記をしていたので、本登記にはAさんの承諾が要るのです。原審は、この参加を適法と認め、Aさんの請求を棄却しました。最高裁は、これを破棄しました。
判例最判平成6・9・27 判時1513号111頁
二重譲渡で権利主張参加の申出の要件が争われた事件 しかしながら、上告人の被上告人B2に対する売買契約に基づく所有権移転登記手続を求める本訴につき、被上告人B1が、被上告人B2に対し代物弁済の予約又は売買の一方の予約による各予約完結の意思表示をしたことを理由とする所有権移転請求権保全の仮登記に基づく本登記手続を求め、かつ、右仮登記後にされた処分禁止の仮処分登記の名義人である上告人に対し右本登記手続の承諾を求めてした本件参加の申出は、民訴法七一条の要件を満たすものと解することはできない。
判旨の読み替えです。民訴法71条は、旧法の条文で、今の47条1項です。上告人は、Aさんのことです。被上告人のB2はBさん、B1はCさんです。次は、理由の部分です。
判例最判平成6・9・27 判時1513号111頁
二重譲渡で権利主張参加の申出の要件が争われた事件 けだし、同条の参加の制度は、同一の権利関係について、原告、被告及び参加人の三者が互いに相争う紛争を一の訴訟手続によって、一挙に矛盾なく解決しようとする訴訟形態であって、一の判決により訴訟の目的となった権利関係を全員につき合一に確定することを目的とするものであるところ(最高裁昭和三九年(オ)第七九七号同四二年九月二七日大法廷判決・民集二一巻七号一九二五頁)、被上告人B1の本件参加の申出は、本件土地(一)、(二)の所有権の所在の確定を求める申立てを含むものではないので、上告人、被上告人B2及び被上告人B1の間において右各所有権の帰属が一の判決によって合一に確定されることはなく、また、他に合一に確定されるべき権利関係が訴訟の目的とはなっていないからである。
判決が挙げた理由は、はっきりしています。Cさんの参加の申出は、土地の所有権の所在の確定を求める申立てを含んでいない。だから、3人の間で所有権の帰属が1つの判決で合一に確定されることはなく、ほかに合一に確定されるべき権利関係も、訴訟の目的になっていない。だから、要件を満たさない、ということです。判決が要件を満たさないとした理由の中心は、所有権の所在の確定を求める申立てを含んでいないので、合一に確定されない、という点です。ここを言い切れれば、この判決は使えます。最高裁は、この参加を、実質は新しい訴えの提起だと見ました。参加の請求は管轄のある裁判所に移送すべきで、原審はAさんとBさんの間の控訴審の審理をするべきだった、としています。要件を欠く参加は、却下ではなく、新しい訴えとして扱われたのです。
図:判決が言ったことと学説の説明の区別の板
- 判決=Cの申出は所有権の所在の確定を求める申立てを含まない→所有権の帰属が合一に確定されない
- 他に合一に確定されるべき権利関係もない
- 判決は書いていない=「実体法上両立する」「登記の自由競争」
- 学説=移転登記請求権が並び立つ・登記の自由競争・社会的には一つの紛争
- 所有権確認を含む参加=判決の射程の問題で見解が分かれる
ここで、判決が言っていないことを分けておきます。判決は、「二重譲渡だから、請求は両立する」とは書いていません。「実体法上、どちらの請求も成り立つ」とも書いていません。判決が言ったのは、所有権の所在の確定を求める申立てを含まないので合一に確定されない、というところまでです。学説には、次のような説明があります。物差しは、冒頭の建物の事案と同じで、一方の請求が認められたら、他方は認められなくなるか、です。建物の事案では、所有者は1人なので、Aさんが勝てばCさんは負けました。二重譲渡では、Bさんは、AさんにもCさんにも売っています。どちらの売買も有効なので、AさんもCさんも、Bさんに対する移転登記の請求権を、実体法上、持っています。両方の請求を認めても、ぶつかりません。だから、AさんとCさんの請求は両立し、権利主張参加の要件を満たさない、という説明です。また、先に登記を得た者が勝つのは、いわば登記の自由競争にすぎない、という見方もあります。逆に、社会的には1つの紛争なのだから、3人に調整の機会を与えるために認めるべきだ、という見方もあります。
Aさんへの所有権確認も含めて参加する形は、判決が直接判断していない形です。判決の事案で、Cさんが求めたのは、Bさんへの本登記と、Aさんの承諾だけでした。所有権の確認は求めていません。判決が判断したのは、この形です。Aさんに所有権確認も求める形が認められるかは、判例の射程の問題で、見解が分かれます。冒頭の合一確定の話とつなげます。判例のいう合一確定は、所有権の帰属が、3人の間で、1つの判決によって決まることでした。Cさんの請求は、Bさんに本登記を求めるものです。所有権の所在を決めてほしい、という申立てを含んでいなければ、3人の間で、1つの判決によって決まるものがありません。判決の理由は、この点を挙げていました。入口の要件で絞るとは、こういうことです。答案での使い方です。要件は、規範カードの「両立しえない」で立てます。そのうえで、二重譲渡の当てはめは、判例の言葉で書きます。所有権の所在の確定を求めない参加では、3人の間で合一に確定されるものがないので、要件を満たさない。両立するから、という理由を書くなら、学説の説明として分けて書きます。
両立性その2——債権者代位訴訟と民法423条の5
図:債権者代位の役割表と判決の前提の板
- 役割=Aさん債権者(原告)・Bさん第三債務者(被告)・Cさん債務者(参加人)
- 設例=AはCへの貸金債権を保全するためCがBに持つ売掛代金債権を代位行使しBに支払を請求
- Cは「Aに借りた覚えはない」
- Cが立てる請求=Aに被保全債権の不存在確認・Bに売掛代金の支払
役割が変わるので、先に固定します。ここだけ、通し事案と並びが違います。Aさんは債権者で、原告です。Bさんは第三債務者で、被告です。Cさんは債務者で、参加人です。以後、この呼び方は変えません。設例です。AさんはCさんにお金を貸しています。Cさんは、Bさんに売掛代金の債権を持っています。Aさんは、貸金債権を守るために、Cさんに代わって、Bさんに売掛代金の支払を求めました。債権者代位です。金銭の債権なので、Aさんは自分への支払を求められます。民法423条の3です。ところが、Cさんは、「Aさんに借りた覚えはない」と言います。弁済済みだ、という主張です。Cさんは、Aさんに対して、貸金債権が存在しないことの確認を求め、Bさんに対して、売掛代金の支払を求めて、参加します。先に確認です。代位訴訟で債権者が受けた判決の効力は、債務者に及ぶのでしょうか?
前に見た、115条1項2号ですよね。訴訟担当者が受けた判決の効力は、本来の権利者にも及びます。債権者代位では、訴訟告知が要ると考える学説が多かったです。だから、この型では、冒頭の建物の事案で見たこと、つまり元の判決の効力は参加人に及ばず、別の裁判で争うことも禁じられない、という説明を、そのまま当てはめません。当事者適格の回で見たように、債権者代位訴訟は、本人の意思と関係なく法律が第三者に訴える資格を与える、法定訴訟担当の典型とされてきましたが、その位置づけは揺れています。法定訴訟担当と見る立場に立てば、Aさんが受けた判決の効力は、Cさんにも及びます。Cさんが同じ請求を別の裁判で立てられるのかは、判例は判断していません。判例が述べたのは、参加という形なら、二重起訴にならない、というところまでです。
図:債権者代位の判例の事案の関係図
- Aさん=土地の賃借人=債権者(原告)
- Cさん=賃貸人・土地の所有者=債務者(参加人)
- Bさん=土地の上に建物を持つ人=第三債務者(被告)
- AはCの所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使しBに建物収去土地明渡しを請求
- Cは無断転貸で解除したと主張しAに賃借権不存在確認・Bに建物収去土地明渡しを請求
判例の事案です。ここでも並びだけ合わせます。Aさんは土地の賃借人で、Cさんは賃貸人、土地の所有者です。Aさんは、Cさんの所有権に基づく妨害排除の請求権を代位行使して、土地の上に建物を持つBさんに、建物を取り壊して土地を明け渡すよう求めました。Cさんは、「Aさんが無断で転貸したので、賃貸借は解除した」と主張しました。そして、Aさんに対して賃借権が存在しないことの確認を、Bさんに対して所有権に基づく建物収去と土地明渡しを求めて、参加しました。債権者の被保全債権、つまり賃借権を、債務者が争った型です。判決が答えた点は、2つです。まず1つめは、債務者の参加は、二重起訴の禁止にふれるか。2つめは、債権者に代位の原因がなかったとき、債務者の訴えは適法か、です。
判例最判昭和48・4・24 民集27巻3号596頁
債権者代位訴訟への債務者の参加が争われた事件 思うに、債権者が民法四二三条一項の規定により代位権を行使して第三債務者に対し訴を提起した場合であつても、債務者が民訴法七一条により右代位訴訟に参加し第三債務者に対し右代位訴訟と訴訟物を同じくする訴を提起することは、民訴法二三一条の重複起訴禁止にふれるものではないと解するのが相当である。けだし、この場合は、同一訴訟物を目的とする訴訟の係属にかかわらず債務者の利益擁護のため訴を提起する特別の必要を認めることができるのであり、また、債務者の提起した訴と右代位訴訟とは併合審理が強制され、訴訟の目的は合一に確定されるのであるから、重複起訴禁止の理由である審判の重複による不経済、既判力抵触の可能性および被告の応訴の煩という弊害がないからである。
民訴法231条は、今の142条です。判決のいう重複起訴の禁止は、二重起訴の回で見た、二重起訴の禁止のことです。同じ事件について、すでに裁判所に係属している間は、別に訴えを起こせません。Cさんの第三債務者への請求は、代位訴訟と訴訟物が同じです。それでも参加なら許されるのは、併合審理が強制され、審理の重複や判断の食い違いという弊害がないからです。2つめの判断です。
判例最判昭和48・4・24 民集27巻3号596頁
債権者代位訴訟への債務者の参加が争われた事件 …したがつて、審理の結果債権者の代位権行使が適法であること、すなわち、債権者が代位の目的となつた権利につき訴訟追行権を有していることが判明したときは、債務者は右権利につき訴訟追行権を有せず、当事者適格を欠くものとして、その訴は不適法といわざるをえない反面、債権者が右訴訟追行権を有しないことが判明したときは、債務者はその訴訟追行権を失つていないものとして、その訴は適法ということができる。
この判決の事案では、賃借権が解除で消えているので、代位の原因がありません。だから、Cさんの訴えは適法とされました。この判決は、「請求が両立しないから権利主張参加だ」と言っているんですか。言っていません。「請求が両立しない」「当事者適格が両立しない」という整理は、判決文にはありません。学説側の説明です。判決が前提にしていたのは、債権者の代位が適法なら、債務者は自分では当事者適格を欠く、という考え方でした。当時は、債権者が代位権の行使に取りかかり、そのことを債務者に知らせるか、債務者が知ったあとは、債務者はその権利を自分では処分できなくなる、と考えられていました。自分で処分できない権利なので、自分で訴える資格もない、という筋です。
図:民法423条の5の前後比較の板
- 判決の前提=債権者の代位が適法なら債務者は当事者適格を欠く
- 民423条の5=債務者は被代位権利について自ら取立てその他の処分をすることを妨げられない・相手方も債務者に履行できる
- 結果=債権者と債務者の当事者適格は両立する
- 現在=債務者が被保全債権を争う→独立当事者参加・争わない→共同訴訟参加
その前提は、平成29年の民法改正で失われました。当事者適格の回でも出てきた条文です。
条文民法423条の5
民法423条の5(債権者代位権の行使に係る債務者の処分権限) 債権者が被代位権利を行使した場合であっても、債務者は、被代位権利について、自ら取立てその他の処分をすることを妨げられない。この場合においては、相手方も、被代位権利について、債務者に対して履行をすることを妨げられない。
債権者が代位権を行使しても、債務者は、自分で取立てなどをしてよい、という規定です。昔の説明は、こうでした。Aさんの代位が適法なら、Cさんには訴える資格がない。適法でなければ、Cさんにある。資格はどちらか一方にしかないので、2人の請求は両立しない。だから権利主張参加だ、という筋です。けれども、今は、Aさんが代位していても、Cさんは自分で取り立てられます。債権者と債務者の当事者適格は、もう両立します。だから、この昔の説明は使えません。今は、債務者が債権者の被保全債権を争う場合は、独立当事者参加、争わない場合は、共同訴訟参加、つまり52条によると考えられています。争う場合を、両立性で説明する学説があります。債務者が被保全債権は存在しないと主張するなら、債権者の請求、つまり代位権がある、という前提と、債務者の主張は、論理的に両立しません。争わない場合は、別の話です。たとえば、Cさんが「Aさんから借りたのは確かだ。でも、Bさんへの代金は自分でも取り立てたい」と言う場合です。AさんとCさんは、Bさんに払わせるという同じ方向を向いています。債権者代位訴訟を法定訴訟担当と見る立場に立てば、Aさんが受ける判決の効力はCさんにも及ぶので、Cさんは、Aさんと並んで加わる形を使います。その中身は、次の回で見ます。補足です。既判力の主観的範囲の回で見たとおり、債権者は、代位訴訟を起こしたら、遅滞なく債務者に訴訟告知をしなければなりません。民法423条の6です。債務者は、この告知で、参加の機会を知ることになります。
⭐ 論文で書く規範:債権者代位訴訟に債務者が参加するとき 債務者が被保全債権の不存在を主張して参加する場合は、独立当事者参加(権利主張参加)。債務者が被保全債権を争わない場合は、共同訴訟参加(52条)による。 (規範(民423条の5後の学説の整理で立てる))
ここは論文で論点になりうる、と押さえておきます。試験では、まず、債権者、第三債務者、債務者のどれがどの当事者かを固定してください。次に、債務者が被保全債権を争っているかを見てください。
参加の手続・片面的参加・要件を欠くとき
図:参加手続の流れの図
- 申出=書面(47条2項)
- 当事者双方に送達(3項)
- 実質は訴えの提起→参加人の請求について訴訟係属
- 申出の方式は43条を準用(4項)
- 要件の調査=口頭弁論に基づいて調べる
- 満たさない場合=併合要件を満たせば主観的追加的併合・満たさなければ別訴
最後は、手続です。通し事案の、Aさん原告、Bさん被告、Cさん参加人に戻ります。47条2項は、参加の申出を書面でしなければならない、と定めます。3項は、その書面を、当事者双方に送達しなければならない、と定めます。なぜ、書面なんですか。独立当事者参加の申出は、実質的には、参加人の請求についての訴えの提起だからです。書面が当事者双方に送達されると、参加人の請求について、訴訟係属が生じます。申出の方式そのものは、4項で43条を準用しています。前回見た条文です。次に、片面的参加です。参加人は、当事者の双方に請求を立てるのが原則です。けれども、一方とは争いがないこともあります。その場合は、争いのない一方には請求を立てず、もう一方だけを相手方にして参加できます。1項の「双方又は一方を相手方として」は、これを明文で認めたものです。通し事案を変えます。Aさんは原告で、Cさんは参加人です。Bさんは、Cさんから建物を借りている借主です。詐害防止の設例とは、貸し借りの向きが逆です。Bさんは、Cさんの所有を争いません。この場合、CさんはBさんには請求を立てず、Aさんだけを相手方にして、建物の所有権確認を求めて参加します。最後に、要件を欠く参加の扱いです。参加の要件は、訴訟要件と同じように、口頭弁論に基づいて調べられます。要件を欠く参加は、一律に却下されるわけではありません。先に確認です。前に見た、原告が訴えを起こしたあとに被告を追加する主観的追加的併合は、判例では、どう扱われましたか?
明文がなくて、判例は否定的でした。別に訴えを起こして、併合を促す、という扱いでした。ただ、今回は、原告が被告を引き込む場面ではなく、第三者が自分から加わろうとした場面です。しかも、参加の申出は、実質は訴えの提起でした。参加としては入れなくても、Cさんの訴えそのものは残ります。だから、要件を欠いた参加も、一般の併合の要件を満たすなら、主観的追加的併合として、併合して審理されます。それも満たさなければ、別の訴えとして扱われます。二重譲渡の判決も、新しい訴えとして、移送しました。
今日の地図(保存版)
図:総括の板
- 当事者参加=独立(47条)と並んで(52条)
- 三面訴訟=二当事者対立構造の例外
- 合一確定の目的≠元の判決の効力が及ぶ
- 前段=詐害防止(実体面+手続面)・後段=権利主張(請求が両立しえない)
- 二重譲渡=所有権の所在の確定を求めない参加は要件を満たさない
- 債権者代位=423条の5で昔の説明が使えない
- 手続=書面・双方に送達・片面的参加は明文・要件を欠けば併合か別訴
まとめます。冒頭のAさん、Bさん、Cさんに戻ります。Cさんは、建物は自分の物だと考えていました。判決が出るのを、傍で見ているしかない立場ではありません。1つめ、当事者になる参加には、独立(47条)と、並んで加わる(52条)の2種類があります。独立当事者参加は、3人が互いに向き合う三面訴訟で、二当事者対立構造の例外です。2つめ、判例は、この制度を合一確定のためと説明しますが、元の判決の効力が参加人に及ぶという意味ではありません。別の裁判で争うこと自体も、禁じられていません。だから、入口の要件で、誰を入れるかを絞ります。3つめ、47条1項の前段は詐害防止参加、後段は権利主張参加です。詐害防止参加では、実体面と手続面の2つを問います。4つめ、権利主張参加では、参加人の請求が、本訴の請求と論理的に両立しえないことが必要です。二重譲渡では、判例は、所有権の所在の確定を求めない参加は、要件を満たさないとしました。債権者代位では、民法423条の5で、昔の説明が使えなくなりました。5つめ、申出は書面で、当事者双方に送達します。片面的参加は明文で認められ、要件を欠けば、併合か別訴として扱われます。試験では、まず、原告、被告、参加人が誰かを固定してください。次に、前段か後段かを分けて、後段なら、参加人の請求と本訴の請求が両立しないかを、当てはめてください。参加したあと、3人がどう裁かれるかは、次の回で扱います。
参照条文
- 民事訴訟法47条
- 民法423条の5