独立当事者参加の審判・訴訟脱退と共同訴訟参加
印刷のコツ
プリンターでは次の設定がおすすめです。
- 用紙:A4 / 向き:縦
- 拡大縮小:「実際のサイズ」(フィット縮小しない)
- 両面印刷:オン、とじ方は「長辺をとじる」(左綴じ)
- モノクロ印刷OK(強調は色でなく太字なので白黒でも読めます)
第4章 複雑訴訟 #82/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
控訴したのはAさんだけ——Bさんの部分は動くのか
図:冒頭の関係図
- 原告A・被告B・参加人C/AはBに請求(本訴)・CはBに請求・CはAにも請求
- 一審=CのBに対する請求を認容・Aは敗訴
- 控訴したのはAだけ・Bは控訴も附帯控訴もしていない
- 問い=Bが控訴していないのに控訴審はCに不利に変えられるか
前回は、Cさんがどうやって三面訴訟に入るか、入口を見ました。今日は、入ったあとです。3人をどう裁くのか、そして途中で抜けることはできるのか、を見ます。場面を1つ用意します。Aさんが原告、Bさんが被告、Cさんが参加人です。建物をめぐって3人が争い、一審の判決が出ました。結論は、CさんのBさんに対する請求を認める、というものでした。勝ったのは、Cさんです。そして、Aさんは、Bさんに勝てませんでした。負けたAさんは、控訴しました。控訴したのは、Aさんだけです。Bさんも、Cさんの請求を認められて負けた側ですが、控訴していません。
Bさんが控訴していないなら、CさんとBさんの部分は、一審のままで決まりじゃないんですか。そこが、今日の最初の問いです。控訴審は、Bさんが控訴していないのに、勝ったCさんに不利な形へ、判決を変えられるのでしょうか。回の最後で答えます。持ち帰ってほしいことは5つです。1つめ、独立当事者参加は40条を借りるが、その意味は共同ではなく、お互いを牽制する規律であること。2つめ、その結果、認諾や自白や和解が効くかどうかは、他の1人に不利益が及ぶかで決まること。3つめ、1人だけが上訴した場合に、判例が何に答えたか。4つめ、訴訟脱退は取下げではなく、脱退した人にも判決の効力が及ぶこと。5つめ、共同訴訟参加と共同訴訟的補助参加は、まったく別のものであることです。
47条4項——40条を借りる理由は「牽制」
図:47条4項と40条の準用の板
- 47条4項=40条1項から3項までを当事者及び参加した者について準用
- 40条本来の意味=共同訴訟人は同じ側で協力する(共同)
- 独立当事者参加=3人は互いに争う(対立)
- 借りる理由=1人を除け者にして他の2人だけで訴訟を動かさせない=対立牽制
先に、共同訴訟の回を思い出してください。40条1項は、1人の訴訟行為を、どんな場合に全員へ効かせるのでしたか?全員の利益になる行為だけです。不利になる行為は、した本人にも効力が生じない、という規律でした。では、条文を見ます。前回は、47条の4項のうち、43条の準用だけを拾いました。今日は、もう半分です。
条文民事訴訟法47条4項
民事訴訟法47条(独立当事者参加) 4 第四十条第一項から第三項までの規定は第一項の訴訟の当事者及び同項の規定によりその訴訟に参加した者について、第四十三条の規定は同項の規定による参加の申出について準用する。
準用される40条は、こうです。
条文民事訴訟法40条
民事訴訟法40条(必要的共同訴訟) 訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合には、その一人の訴訟行為は、全員の利益においてのみその効力を生ずる。 2 前項に規定する場合には、共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為は、全員に対してその効力を生ずる。 3 第一項に規定する場合において、共同訴訟人の一人について訴訟手続の中断又は中止の原因があるときは、その中断又は中止は、全員についてその効力を生ずる。
対象は、当事者と、参加した者、つまりAさん、Bさん、Cさんの3人全員です。必要的共同訴訟のときの40条は、文字どおり「共同」の規律でした。同じ側の人たちが、全員で1つの結論を受けるので、1人の不利な行為で全員が巻き込まれないようにする、という意味です。独立当事者参加は、3人が共同していません。互いに争っています。それでも借りているのは、意味が違うからです。ここでの狙いは、1人を除け者にして、残る2人だけで訴訟を勝手に動かさせないこと。牽制です。たとえば、こんな話です。3人が、1つのケーキを取り合っているとします。そのとき、2人が「じゃあ、半分ずつにしよう」と決めて、3人目の取り分をなかったことにしてしまったら、3人目は困ります。それを止めるルールが、ここでの40条の準用です。争う姿勢を見せている人がいる限り、その人を置き去りにした結論は出させない。この見方で、次の認諾や自白を考えると、すっきりします。
⭐ 論文で書く規範:独立当事者参加で40条を準用する意味 共同ではなく、対立牽制。3人のうち1人を除外して、他の2人だけで訴訟を追行させないための規律である。 (趣旨(47条4項の準用の意味づけ))
認諾・自白・和解——どこまで止まるのか
図:認諾の場面の関係図と表
- BがAの請求を認諾
- Cは争っている
- 40条1項の準用=全員の利益になる行為だけ有効
- Cが争う限り効力を生じない
- 不利益を受けるのはC=AとBの2人だけで結論を決められてしまう
- 自白も同じ・Bさん本人にも効かない
役割は変わりません。Aさんは原告、Bさんは被告、Cさんは参加人です。BさんがAさんに対して、「請求どおりです」と認諾したとします。Cさんは、「その建物は私の物だ」と争い続けています。先に確認です。BさんがAさんの請求を認諾したとき、Cさんが争っているなら、その認諾の効力はどうなるでしょうか?40条1項が準用されるので、Cさんの利益にならない行為は、効力を生じない、です。認諾は、Cさんにとっては不利な行為です。AさんとBさんだけで結論が決まってしまうと、Cさんの請求が置き去りになるからです。だから、Cさんが争う限り、効力を生じません。
効力がないのは、Cさんに対してだけですか。認諾したBさん本人には、有効なんですか。違います。Bさん本人にも効きません。Bさん本人にだけ効くとすると、AさんとBさんの間では「Aさんの物」で決まったのに、CさんとBさんの間では「Cさんの物」となることがありえます。結論が割れてしまいます。3人で1つの結論にする手続では、それは許されません。だから、不利な行為は、本人にも、まるごと効力がありません。共同訴訟の回と同じ理屈です。自白も同じです。たとえば、Aさんが「あの建物はもともと私が建てた」と主張し、Bさんが「そのとおりです」と認めても、Cさんが争っている限り、Bさんの自白は効力を生じません。
独立当事者参加では、認諾も和解も、いつもできないんですか。そこは、一律には言えません。判断の軸は、他の1人に不利益が及ぶかどうかです。たとえば、金銭の支払いだけが問題になっている場面で、Bさんが、AさんにもCさんにも、請求どおり払います、と条件なしで認めたとします。この場合、誰も不利益を受けません。だから、認めてよいと考えられています。和解も同じ軸です。AさんとBさんだけで和解をしても、Cさんに不利益が及ばないなら、2者間でできると考えてよいでしょう。ただし、公表された下級審の裁判例には、これに反対するものもあります。ここは、断定しすぎない方がよい論点です。答案では、認諾や和解の可否を聞かれたら、40条の準用は対立牽制のため、と趣旨を書いて、そのあとに、残る1人に不利益が及ぶかを当てはめます。
2項と3項——一方への行為は他方にも
図:40条2項・3項の準用の表
- 2項=1人に対する相手方の訴訟行為は全員に対して効力を生ずる
- 3項=1人に中断・中止の原因があれば全員について中断・中止
- 例=Bさんが死亡し訴訟代理人がいない→AさんとBさんの手続だけでなくCさんとの手続も止まる
1項は、行為が全員に及ぶのは有利なときだけ、という規律でした。2項と3項は、方向が違います。2項は、相手方の訴訟行為です。1人に対して相手が訴訟行為をしたら、原則として、他の1人に対してもしたことになります。有利か不利かは問いません。3人のうち誰かに向けた行為が、手続の外にいる誰かに届かない、という状態を作らないための規律です。3項は、中断と中止です。3人のうち誰か1人に、中断や中止の原因が生じたら、その中断や中止は、全員について効力を生じます。例です。Bさんが亡くなり、訴訟代理人もいなかったとします。すると、AさんとBさんの間の手続だけでなく、CさんとBさんの間、そしてCさんとAさんの間の手続も、止まります。3人で1つの手続だからです。訴訟代理人がいれば、中断は生じません。代理人が、そのまま手続を続けられるからです。124条2項でした。40条には4項もありますが、47条4項が準用するのは、1項から3項までです。被保佐人などの上訴の特則である4項は、含まれません。
敗訴者の1人だけが控訴したら——判例が答えたこと
図:一部上訴の場面の表
- 一審=CのBに対する請求を認容・Aは敗訴
- 敗訴者=A(Bに勝てなかった)とB(Cの請求を認容された)
- 控訴したのはAだけ
- Bは控訴も附帯控訴もしていない
- Cは勝訴部分について控訴の必要がなかった
- 問い=CとBの部分は動くか・Bの控訴なしにCに不利に変えられるか
冒頭の場面に戻ります。役割を言い直します。Aさんは原告、Bさんは被告、Cさんは参加人です。一審は、CさんのBさんに対する請求を認め、Aさんを敗訴させました。控訴したのは、Aさんだけです。Bさんは、控訴も附帯控訴もしていません。附帯控訴は、相手の控訴に乗って、自分の不服も持ち込む手続でした。客観的併合の回で見ました。Cさんは、勝ったので、控訴する必要がありませんでした。問いは2つに分けられます。1つめ、誰も不服を言っていない、CさんとBさんの部分は、Aさんの控訴で動くのか。2つめ、動くとして、控訴審は、Bさんの控訴がないままで、その部分をCさんに不利に変えられるのか。
二当事者の訴訟なら、不服を申し立てなかった部分は、そこで決まるのが原則です。けれども、三面訴訟には、3本の線が1つの結論で結ばれているという特徴がありました。そこで、判例の判旨を見ます。
判例最判昭和48・7・20 民集27巻7号863頁
三者間で合一にのみ確定すべき場合に、原告のみが控訴した事件 しかし、本件は、訴訟の目的が原告、被告および参加人の三者間において合一にのみ確定すべき場合(民訴法七一条、六二条)に当たることが明らかであるから、一審判決中参加人の被告に対する請求を認容した部分は、原告のみの控訴によつても確定を遮断され、かつ、控訴審においては、被告の控訴または附帯控訴の有無にかかわらず、合一確定のため必要な限度で一審判決中前記部分を参加人に不利に変更することができると解するのが相当である
判決は旧法の条文を挙げています。71条は今の47条1項、62条は今の40条です。原告はAさん、被告はBさん、参加人はCさんです。判決は、三者間で合一にのみ確定すべき場合に当たることを、「明らか」とだけ述べています。冒頭の場面で言えば、AさんもCさんも、同じ建物を自分の物だと言って争っています。Aさんの物という結論と、Cさんの物という結論は、両方は立ちません。3人の間で、矛盾しない1つの結論しか出せない。これが、合一にのみ確定すべき場合の意味です。判決が答えたのは、2点です。1点め、Aさんだけが控訴しても、CさんとBさんの部分の確定は遮断される。2点め、控訴審は、Bさんの控訴や附帯控訴があってもなくても、合一確定のために必要な限度で、その部分をCさんに不利に変更できる。
判決は、上訴の期間が過ぎれば確定します。Aさんの控訴で、三面の全体が、確定しないまま上の審級に移る、ということです。判決は理由を長く書いていませんが、40条の準用から、こう説明できます。共同訴訟の回では、上訴は有利な行為なので、確定遮断も移審も全員に及ぶ、と見ました。ここでも、控訴は、一審で負けたAさんとBさんにとって有利な行為です。勝ったCさんには有利ではありませんが、Cさんを置き去りにして、2人だけで結論を決める行為でもありません。3人の結論を、まとめて上に運ぶだけです。だから、40条1項の準用で、Aさんの控訴の効果は、Bさんの部分にも及ぶ、と説明できます。
図:「必要な限度」の設例板
- 控訴審で所有者はAと判明→一審のままだと「Cの物・Bは明け渡せ」が残りAの物という結論と衝突→Bの控訴がなくてもC対Bの部分をCに不利に直す
- 逆に所有者はCと確かめられた→衝突なし→C対Bの部分は一審のまま動かさない
- 動かすのは矛盾を解消するのに必要な分だけ
「必要な限度」の意味は、設例で確かめます。ここは、判決の言葉の意味を確かめる例で、判決が書いた理由ではありません。控訴審で審理すると、建物の所有者は、Cさんではなく、Aさんだと分かったとします。一審のままだと、「所有者はCさんで、Bさんは明け渡せ」という部分が残り、Aさんが所有者だという結論と衝突します。3人の間で矛盾のない結論にするために、CさんとBさんの部分を、Cさんに不利に直す。Bさんが控訴していなくても、です。そして、矛盾を解消するのに必要な分だけ動かす、というのが「必要な限度」です。逆に、たとえば、控訴審でも所有者はCさんだと確かめられたなら、Aさんの結論とぶつかるものはありません。そのときは、CさんとBさんの部分は、一審のまま動かしません。
⭐ 論文で書く規範:1人だけが上訴したときの判例 参加人の被告に対する請求を認容した部分は、原告のみの控訴によっても確定を遮断され、控訴審は、被告の控訴又は附帯控訴の有無にかかわらず、合一確定のため必要な限度で、その部分を参加人に不利に変更することができる。 (規範(判例の判示。出どころ=判例))
上訴しなかった者の地位と304条
図:上訴審での地位の対比板
- 問い=控訴していないBは控訴審でどんな地位か
- 上訴人説=40条1項の準用でBも上訴人とみる
- 被上訴人説=40条2項の準用でBを被上訴人とみる
- 判決は名前を付けていない
- その後の判例=自ら上訴しない者は被上訴人
- 課題=304条=控訴審の審判は不服申立ての範囲
もう1つ、大事な問いがあります。控訴していないBさんは、控訴審では、どんな立場なのでしょうか。控訴した側の控訴人か、控訴された側の被控訴人か。上訴一般の言葉では、上訴人か、被上訴人か、です。判決は、Bさんの地位に名前を付けていません。答えたのは、先ほどの2点だけです。名前の付け方は、学説では分かれます。学説には、40条1項を準用して、Bさんも上訴人とみる立場があります。Aさんの控訴は、全員の利益になる行為として、Bさんにも及ぶからです。これに対して、40条2項を準用して、Bさんを被上訴人とみる立場もあります。Aさんの控訴を、相手方の訴訟行為として、Bさんに対しても行われたものとみるからです。そして、その後の判例は、自ら上訴をしない者を被上訴人として扱う、と整理されています。ただ、これは先ほどの判決が言ったことではありません。判決の言葉と、その後の判例の言葉を、混ぜないでください。ここで、必要的共同訴訟の回を思い出してください。株主代表訴訟や住民訴訟では、自ら上訴しなかった共同訴訟人は上訴人にならない、と判例が述べていました。確定遮断と移審は全員に及ぶけれど、上訴人の地位までは与えない、という切り分けでした。ただ、あの判例は、事件の種類を限って述べたもので、しかも同じ側に並ぶ共同訴訟人の話です。今日のBさんは、AさんともCさんとも争う立場なので、そのまま当てはめず、別の問いとして考えます。
大きいのは、控訴審で、Bさんの部分を動かせるかどうかです。これまでの考え方を大づかみに言うと、Bさんを上訴人とみる立場なら、Bさんの部分も審判の対象になるので、Cさんに不利に変えられます。被上訴人とみる立場なら、Bさんは不服を申し立てていないので、変えられない、という方向でした。控訴審が一審判決を変えられるのは、不服申立ての限度だけだからです。客観的併合の回で見た、304条です。ところが、判例は、Bさんが控訴していなくても、合一確定のために必要なら、Bさんの関わる部分を変更できるとしました。先ほどの、その後の判例の整理と合わせると、名前は被上訴人の側、結論は変えられる側です。判例は、控訴審での当事者の地位と、審判の対象を、直結させていません。けれども、304条との関係をどう説明するかは、課題として残ります。実質、控訴しなかった人の判決を変更する必要のない場合まで、被上訴人扱いしなければならないのか、という疑問もあります。詳しくは上訴の回で扱います。ここは、論文で論点になりうる、と押さえておいてください。答案では、まず、誰が上訴して誰がしていないかを固定します。次に、確定の遮断、変更できる限度の順で書きます。
二当事者訴訟への還元——取下げ
図:還元の場面の表
- 訴えの取下げ=動く人A・Bの同意(261条2項の場面)に加えCの同意も要るとされる・もっとも疑問もある
- 取下げ後=CがAとBの両方に請求する共同訴訟に還元
- 参加申出の取下げ=動く人C・訴えの取下げに準じる・取下げ後=AとBの当初の訴えが残る
三面訴訟は、途中で二当事者の訴訟に戻ることもあります。これを、還元と呼びます。方法は3つです。訴えの取下げ、参加申出の取下げ、そして訴訟脱退です。まず、取下げの2つを見ます。役割は変わりません。Aさんが訴えを取り下げるとき、Bさんが本案について書面を出したあとなら、Bさんの同意が要ります。訴えの取下げの回で見た、261条2項の場面です。加えて、Cさんの同意も要るとされています。Cさんの同意まで要るのかには、疑問も出されています。Bさんの同意が要るのは、白黒つけたいと動き出したBさんが、損をしないためでした。Cさんについては、その理由がそのまま当てはまるかが、はっきりしません。たとえば、建物の事件でAさんが取り下げても、Cさんは、Aさんには「建物は私の物だ」と、Bさんには「明け渡せ」と、求め続けられます。つまり、CさんがAさんとBさんの両方に請求する共同訴訟に、形が変わるだけです。それでも、Cさんの同意も要るとされています。要るのかどうかには疑問がある、と押さえてください。次に、参加申出の取下げです。Cさんは、参加をやめて、申出を取り下げられます。前回見たとおり、参加の申出は、実質はCさんの訴えの提起でした。だから、訴えの取下げに準じて考えます。取下げのあとは、AさんとBさんの、当初の訴えが残ります。どちらの取下げも、訴訟がなかったことになる、という点が同じです。261条の取下げは、訴訟をなかったことにする行為でした。この性質が、次の脱退との決定的な違いになります。
訴訟脱退(48条)——抜けても判決は及ぶ
図:訴訟脱退の板
- 48条=参加前の原告又は被告が相手方の承諾を得て訴訟から脱退できる
- Cは脱退できない
- 判決は脱退した当事者に対してもその効力を有する
- 設例=Bは二重に払いたくないだけ→BがAとCの争いから抜ける
- 取下げとの違い=取下げは係属が消える・脱退は判決の効力が及ぶ
条文を見ます。
条文民事訴訟法48条
民事訴訟法48条(訴訟脱退) 前条第一項の規定により自己の権利を主張するため訴訟に参加した者がある場合には、参加前の原告又は被告は、相手方の承諾を得て訴訟から脱退することができる。この場合において、判決は、脱退した当事者に対してもその効力を有する。
脱退できるのは、参加前の原告か被告です。Aさんか、Bさんです。参加人のCさんは、脱退できません。承諾は、条文では「相手方の承諾」です。参加人の承諾が要るかどうかは、条文には書かれていません。ここは、条文の言葉のまま覚えてください。使う場面を1つ挙げます。金銭の請求で、AさんとCさんが、それぞれ「Bさんに貸したお金を返せ」と言っています。ただし、債権者はどちらか1人のはずです。Bさんは、どちらが本当の債権者でもかまいません。二重に払うのだけは避けたい。こういうとき、Bさんは、AさんとCさんの争いから抜けて、2人に決着をつけてもらえます。先に確認です。脱退したBさんに、判決の効力は及ぶでしょうか? 取下げとは、どこが違うでしょうか?
48条の後段で、判決は、脱退した当事者に対してもその効力を有する、とあります。取下げは、訴訟がなかったことになるので、判決は出ません。脱退は取下げではありません。抜けたBさんにも、AさんとCさんの勝負の結果は及びます。たとえば、Aさんが勝つなら、Bさんは、Aさんに払わなければなりません。席を立っても、勝負の結果からは逃げられない、という構造です。
⭐ 論文で書く規範:訴訟脱退と訴えの取下げの違い 訴訟脱退は取下げではない。脱退しても、判決は脱退した当事者に対してもその効力を有する。 (条文どおり(民事訴訟法48条後段))
脱退の性質論——空白をどう埋めるか
図:脱退の性質論の対比板
- 1 予告的放棄・認諾説=脱退者は自己の立場をAとCの勝敗に任せ判決を条件に予告的に請求の放棄・認諾をする(266条・267条)
- 長所=効力を処分的性質から導ける・執行力も導きやすい
- 批判=Aの請求を認める判決なら・CのBに対する請求に棄却という決着が付かない=空白
- 2 防御権放棄説=当事者としての防御権を放棄するにすぎず・脱退者に対する請求は審判対象として残る=空白なし
- 両者を合わせる整理もある
では、脱退とは何をする行為なのか。ここは学説が分かれます。答案では、複数あることを押さえて、自分の立場を1つ立てて、理由を書く論点です。学説には、脱退を、自分の立場を、AさんとCさんの勝ち負けに任せ、判決を条件として、あらかじめ請求の放棄や認諾をする行為とみる立場があります。放棄と認諾は、266条と267条、つまり、敗けを認めて終わる形でした。これなら、脱退者にも判決の効力が及ぶ理由を、処分の性質から説明できますし、執行力も導きやすいと言われます。欠点はないんですか。あります。空白が生じる、という批判です。Aさんの請求が認められる場合を考えてください。BさんはAさんの請求を認諾したことになります。では、CさんのBさんに対する請求はどうなるか。放棄や認諾で説明すると、この部分に棄却の効果が生じません。さきほどの、貸したお金を返せ、という例で言えば、Aさんが勝てば、BさんはAさんに払います。ところが、CさんのBさんに対する「返せ」という請求には、棄却という決着が付きません。Cさんが債権者ではないと分かったのに、その請求には、何の効力も及ばない。これが空白です。これに対して、脱退を、当事者として防御する権利を放棄するにすぎない、とみる立場があります。この立場では、脱退したBさんに対する請求は、審判の対象として残ります。空白は生じません。両方を合わせる整理もあります。条件付きの放棄や認諾の効果と、制度として合理的な効果の、二面から説明する、というものです。
答案では、脱退は取下げではない、判決の効力が及ぶ、というところは動かさずに、性質については、自分で1つ選び、なぜそれを選んだかを書いてください。
共同訴訟参加(52条)——当事者として並ぶ
図:共同訴訟参加の関係図
- 役割の言い直し=Aさん=訴えを起こした株主(原告)・Bさん=責任を追及される取締役(被告)・Cさん=他の株主でAさんの側に共同訴訟人として参加
- Cは当事者・当事者適格が要る
- 参加後は合一確定を要する共同訴訟(40条)
- 株主代表訴訟(会社849条1項)
最後に、5つめです。共同訴訟参加と、共同訴訟的補助参加を、並べて見ます。まず、共同訴訟参加です。役割が変わります。ここだけ、Aさん、Bさん、Cさんの並びが、今までと違います。Aさんは、会社のために訴えを起こした株主で、原告です。Bさんは、責任を追及される取締役で、被告です。Cさんは、別の株主です。条文です。
条文民事訴訟法52条
民事訴訟法52条(共同訴訟参加) 訴訟の目的が当事者の一方及び第三者について合一にのみ確定すべき場合には、その第三者は、共同訴訟人としてその訴訟に参加することができる。 2 第四十三条並びに第四十七条第二項及び第三項の規定は、前項の規定による参加の申出について準用する。
Cさんは、Aさんと並んで、共同訴訟人として入ります。CさんはBさんに請求を立て、Aさんとは争いません。同じ側で戦います。独立当事者参加との違いは、そこです。だから、Cさんには当事者適格が要ります。Cさんが株主として責任を追及する適格を持っているから、入れるのです。参加のあとは、AさんとCさんが、合一確定を要する共同訴訟、40条の共同訴訟になります。株主代表訴訟は、株主が、会社のために、取締役の責任を追及する訴えです。各株主が単独で訴えられますが、1人への判決の効力がほかの株主にも及ぶので、一緒に訴えれば合一確定が必要になります。共同訴訟の回で見た、類似必要的共同訴訟の形です。52条の参加は、この形を、あとから作ります。会社法849条1項も、株主が、共同訴訟人としてこの訴訟に参加できると定めています。主観的追加的併合を覚えていますか。判例が、明文がない、として否定的だった、あとから当事者を増やす形です。52条は、その反対で、あとから加わる形を、明文で認めた例のひとつです。前回の債権者代位訴訟も、ここに戻ってきます。債務者が、債権者の被保全債権を争わないなら、共同訴訟参加が使えました。争うなら、独立当事者参加でした。
共同訴訟的補助参加——参加人のまま強くなる
図:3つの参加の対比板
- 通常の補助参加=当事者でない・被参加人の訴訟行為と抵触する行為は効力を有しない(45条2項)
- 共同訴訟的補助参加=当事者でない・当事者適格は要らない・45条2項の制約に縛られず40条を借りる(行訴22条・人訴15条)
- 共同訴訟参加(52条)=当事者・当事者適格が要る・40条の共同訴訟
先に確認です。補助参加人の行為が、被参加人の行為と食い違ったら、どうなりますか?補助参加人の行為は、効力を有しません。45条2項でした。補助参加人は、当事者ではなく、被参加人の邪魔になる行為はできません。これが、通常の補助参加の限界です。役割を、もう一度言い直します。Aさんは原告、Bさんは被告です。Cさんは、判決の結果によって権利を害されるおそれのある第三者です。このCさんに、通常の補助参加人よりも強い地位を与えたい、という場面があります。これが、共同訴訟的補助参加です。共同訴訟参加との違いは、Cさんが当事者にならないところです。参加人のまま、当事者ではありません。だから、当事者適格も要りません。その代わり、通常の補助参加のように、被参加人の行為と食い違ったら効力なし、という縛りを外して、40条の規律を借りる形になります。解釈上、行政事件訴訟法22条の参加が、これにあたるとされてきました。たとえば、近所の人が建築確認の取消しを求める訴訟に、その建物を建てる人が加わる場面です。条文の上では、22条4項が、40条1項から3項を準用しています。人事訴訟法15条は、検察官が被告になる人事訴訟で、相続権を害されるおそれのある利害関係人が加わる場合について、45条2項を適用しない、40条1項から3項を準用する、ただし3項は中止の部分だけ、と定めています。共同訴訟参加ができる場合でも、補助参加を申し立てることはできます。
整理すると、共同訴訟参加は当事者、共同訴訟的補助参加は参加人のままで、通常の補助参加より強い、です。当事者になるかどうか、当事者適格が要るかどうか、この2点で分けてください。
今日の地図(保存版)
図:総括の板
- 冒頭の答え=控訴審はBの控訴がなくても合一確定に必要な限度でCに不利に変更できる
- 40条準用=対立牽制・認諾自白は残る1人が争う限り無効・和解は不利益が及ぶか
- 2項3項
- 一部上訴=確定遮断+必要な限度の変更+304条との緊張
- 取下げと脱退の違い
- 52条=当事者・共同訴訟的補助参加=参加人のまま
まとめます。冒頭のAさん、Bさん、Cさんに戻ります。控訴したのは、Aさんだけ。Bさんは控訴していません。答えです。控訴審は、Bさんが控訴していなくても、合一確定のために必要な限度で、勝ったCさんに不利な形へ判決を変えられます。ただし、動かせるのは、必要な限度までです。1つめ、47条4項は、40条1項から3項を準用します。その意味は、共同ではなく、対立牽制です。つまり、3人のうち1人を除け者にして、他の2人だけで訴訟を動かさせない、という規律です。2つめ、認諾や自白は、残る1人が争う限り、効力を生じません。金銭の無条件の認諾や、和解は、他の1人に不利益が及ぶかで考えます。2項と3項は、一方への行為は他方へも、中断や中止は全員へ、です。3つめ、1人だけが上訴した場合、判例は、確定の遮断と、合一確定に必要な限度での変更に答えました。上訴しなかった者の地位の名づけは、先ほどの判決の言葉ではありません。304条との緊張が課題として残ります。4つめ、脱退は取下げではありません。脱退した当事者にも、判決の効力が及びます。性質については、学説が分かれます。5つめ、共同訴訟参加は、当事者として並ぶ形で、当事者適格が要ります。共同訴訟的補助参加は、参加人のままで、通常の補助参加より強い地位です。試験では、まず、原告、被告、参加人が誰かを固定してください。次に、誰が上訴して誰がしていないか、誰が抜けようとしているかを確かめます。次の回は、訴訟の途中で、当事者の立場が入れ替わる場面です。
参照条文
- 民事訴訟法47条4項
- 民事訴訟法40条
- 民事訴訟法48条
- 民事訴訟法52条