民訴ゼロから民訴#90

再審

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第5章 上訴・再審 #90/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

知らないうちに確定した判決は、もう覆せないのか

冒頭の関係図(A=A社・貸金業者で前訴の原告・のちの再審被告/B=Bさん・借主で前訴の被告・のちの再審原告/C=Bさんと同居する兄・Bさんの名前で借り入れをした/A社がBさんに貸金返還を請求・Cが訴状と判決書を受け取りBさんに渡さない/Bさんは欠席・A社が勝訴・控訴の期間が過ぎて確定/数年後に給料の差押えの通知で初めて知る/問い=上訴の道が閉じたあとに打つ手はあるか) 図:冒頭の関係図

  • A=A社・貸金業者で前訴の原告・のちの再審被告
  • B=Bさん・借主で前訴の被告・のちの再審原告
  • C=Bさんと同居する兄・Bさんの名前で借り入れをした
  • A社がBさんに貸金返還を請求・Cが訴状と判決書を受け取りBさんに渡さない
  • Bさんは欠席・A社が勝訴・控訴の期間が過ぎて確定
  • 数年後に給料の差押えの通知で初めて知る
  • 問い=上訴の道が閉じたあとに打つ手はあるか

Bさんは、ある日、勤め先から連絡を受けました。「給料の差押えの通知が、裁判所から届いています」。Bさんには、何のことか分かりません。調べてみると、貸金業者のA社が、数年前に、Bさんを被告にして、貸したお金の返還を求める訴えを起こしていました。判決はA社の勝ち。Bさんは、その裁判のことを、まったく知りませんでした。届いてはいました。Bさんと同居している、兄のCさんが受け取っていたんです。実は、Bさんの名前で借り入れをしたのは、Cさんでした。Cさんは、それを知られたくなくて、訴状をBさんに渡しませんでした。訴状は、同居の家族に渡せば送達の効力が生じる、補充送達という方法で届けられています。Bさんは欠席のまま、A社が勝ちました。判決書も、同じようにCさんが受け取り、Bさんには渡りません。控訴できる期間はそのまま過ぎて、判決は確定しました。

ここまで第5章で見てきた上訴は、どれも、判決が確定する前の道でした。確定してしまった判決には、使えません。そこで出てくるのが、今日の再審です。確定した判決を取り消して、もう一度、審理をやり直す。確定したあとに残された、非常の救済です。ただし、誰でも、いつでも使える道ではありません。今日の問いは3つです。どんな事由があれば使えるのか。いつまでに起こさなければならないのか。起こしたあと、どんな手続で進むのか。Bさんの事案に通して、順に答えます。

再審とは何か——既判力を破る非常手段

再審の板(再審=確定した判決をなかったことにしてもう一度裁判し直す例外の不服申立て・即時抗告で争える決定命令で確定したものには準再審349条/上訴=期間内にすれば確定を遮る・116条2項/再審=すでに確定した判決を壊す/対立軸=既判力による法的安定と正義/絞りは3つ=事由は限定列挙(338条1項)・期間は短く(342条)・上訴で言えたことは言わせない(338条1項ただし書)/喩え=確定判決は引渡し済みで住人がいる建物・上訴は引渡し前の検査・再審は住人がいる建物の壁をはがす工事) 図:再審の板

  • 再審=確定した判決をなかったことにしてもう一度裁判し直す例外の不服申立て・即時抗告で争える決定命令で確定したものには準再審349条
  • 上訴=期間内にすれば確定を遮る・116条2項
  • 再審=すでに確定した判決を壊す
  • 対立軸=既判力による法的安定と正義
  • 絞りは3つ=事由は限定列挙(338条1項)・期間は短く(342条)・上訴で言えたことは言わせない(338条1項ただし書)
  • 喩え=確定判決は引渡し済みで住人がいる建物・上訴は引渡し前の検査・再審は住人がいる建物の壁をはがす工事

まず、再審とは何か。確定した判決をなかったことにして、もう一度裁判し直す、例外的な不服申立てです。上訴と再審を分けるのは、確定の前か後かです。上訴は、期間内にすれば、判決の確定を遮ります。第5章の最初に見た、確定遮断効です。116条2項でした。上訴は確定を止める手続で、再審は、すでに確定したものを壊す手続です。喩えます。確定した判決は、引渡しが済んで、住人が暮らしている建物です。上訴は、引渡し前の検査で、直してもらうこと。再審は、住人がいる建物の壁を、あとからはがす工事です。壁をはがせば、住んでいる人の生活が揺らぎます。だから、はがしてよいのは、建物の構造に関わる欠陥だけ。申込みは早くしなければならず、検査のときに気づけた欠陥は、あとで言わせない。この三つの制限が、これから見る、事由と、期間と、補充性にあたります。

確定判決の既判力は、同じ紛争を蒸し返させない、一番強い効力です。既判力の回で見たとおり、既判力が正当化されるのは、当事者に、主張して立証する手続の機会が保障されていたからでした。争う機会があったのだから、結果に拘束されてもよい、という理屈です。その既判力を破るのが再審です。破りすぎれば法的安定が崩れ、破らなさすぎれば、正義に反する判決が残る。この、法的安定と正義の対立が、再審の全体を貫く軸です。条文です。再審の事由を定めた338条の1項で、まず柱書とただし書を読みます。

条文民事訴訟法338条1項

民事訴訟法338条1項(再審の事由・柱書) 第三百三十八条 次に掲げる事由がある場合には、確定した終局判決に対し、再審の訴えをもって、不服を申し立てることができる。ただし、当事者が控訴若しくは上告によりその事由を主張したとき、又はこれを知りながら主張しなかったときは、この限りでない。

注目する言葉は三つです。「次に掲げる事由がある場合には」。事由は、この列挙に限られます。これが限定列挙です。次に、「確定した終局判決に対し」。再審の対象は、確定した終局判決です。決定や命令のうち、即時抗告で不服を申し立てられるもので確定したものに対しては、準再審という申立てが認められていて、349条が定めています。三つめがただし書です。控訴や上告で主張した場合と、知りながら主張しなかった場合は、再審ができません。補充性の話で、あとで見ます。

再審の事由——2つの束

再審事由の2分類板(整理の仕方=束A手続の土台が崩れた=1号裁判所の構成が法律に従っていない・2号関与できない裁判官の関与・3号代理権等を欠いた/束B判決の基礎が崩れた=4号裁判官の職務に関する罪・5号他人の犯罪行為による自白や攻撃防御の妨害・6号文書等の偽造変造や電磁的記録の不正作出・7号証人等の虚偽陳述・8号基礎の裁判や行政処分の変更・9号重要事項の判断の遺脱・10号前に確定した判決と抵触/束Aは判決の中身を問う前に手続が成り立っていない・束Bは判決の材料や前提がゆがんでいた) 図:再審事由の2分類板

  • 整理の仕方=束A手続の土台が崩れた=1号裁判所の構成が法律に従っていない・2号関与できない裁判官の関与・3号代理権等を欠いた
  • 束B判決の基礎が崩れた=4号裁判官の職務に関する罪・5号他人の犯罪行為による自白や攻撃防御の妨害・6号文書等の偽造変造や電磁的記録の不正作出・7号証人等の虚偽陳述・8号基礎の裁判や行政処分の変更・9号重要事項の判断の遺脱・10号前に確定した判決と抵触
  • 束Aは判決の中身を問う前に手続が成り立っていない・束Bは判決の材料や前提がゆがんでいた

338条1項には、1号から10号まで、10個の事由が並んでいます。順に暗記するのではなく、2つの束に分けます。これは条文の見出しではなく、整理の仕方です。1つめの束は、1号から3号。手続の土台が崩れた場合です。裁判所の構成が法律どおりでなかった。関与できない裁判官が関与した。代理権を欠いたまま訴訟が進んだ。どれも、判決の中身が正しいかを問う前に、手続そのものが成り立っていなかった場合です。2つめの束は、4号から10号。判決の基礎が崩れた場合です。判決に使われた材料や、判決の前提が、犯罪によって、あるいはあとの事情の変化によって、ゆがんでいた。あるいは、判断すべきことが落ちていた、前の確定判決と食い違っていた、という場合です。なぜ、この2つの束なら、既判力を破ってよいのか。既判力は、争う機会が保障されていたから、結果に拘束されてよい、という理屈でした。1つめの束は、その機会を与える手続そのものが、成り立っていなかった。2つめの束は、手続はあっても、判断の材料や前提が崩れていた。どちらも、結果に拘束してよい前提が、崩れています。まず、1つめの束の条文を読みます。

条文民事訴訟法338条1項

民事訴訟法338条1項1号〜3号(再審の事由) 一 法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと。 二 法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。 三 法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。

1号です。合議体の裁判官の数が足りないなど、裁判所の構成が法律に従っていない場合です。口頭弁論を聞いていない裁判官が判決に加わった場合、つまり直接主義に違反した場合も、判決をする裁判所の構成が法律に従っていなかったことになり、この1号の問題です。2号は、法律により判決に関与できない裁判官が、関与した場合です。除斥事由、つまり当事者の親族であるなど、法律上当然に事件から外れる事情のある裁判官が加わった場合が、まさにこれにあたります。3号は、代理権を欠いたまま訴訟が進んだ場合です。代理権のない者が代理人として訴訟をした場合が、典型です。他人の名前を勝手に使った氏名冒用の訴訟も、この3号を類推して扱う、と考えられています。3号は、あとで大きく広がる話があるので、少し待ってください。

上告理由と再審事由の対応板(上告理由312条2項→再審事由338条1項/1号裁判所の構成が違法→1号に対応/2号関与できない裁判官→2号に対応/4号代理権等を欠いた→3号に対応/上告理由にだけある=二の二日本の裁判所の管轄権の専属違反・3号専属管轄違反・5号口頭弁論の公開違反・6号判決に理由がない又は理由に食違い/再審事由にだけある=4号〜10号/注意=上告の4号が再審の3号・番号がずれる) 図:上告理由と再審事由の対応板

  • 上告理由312条2項→再審事由338条1項
  • 1号裁判所の構成が違法→1号に対応
  • 2号関与できない裁判官→2号に対応
  • 4号代理権等を欠いた→3号に対応
  • 上告理由にだけある=二の二日本の裁判所の管轄権の専属違反・3号専属管轄違反・5号口頭弁論の公開違反・6号判決に理由がない又は理由に食違い
  • 再審事由にだけある=4号〜10号
  • 注意=上告の4号が再審の3号・番号がずれる

重なっているものと、重なっていないものがあります。板で並べます。上告理由の1号が、再審の1号。上告理由の2号が、再審の2号。そして、上告理由の4号、代理権を欠いたことが、再審の3号です。番号がずれるので、気をつけてください。逆に、上告理由にはあっても、再審の事由にはないものがあります。管轄権の専属に関する規定の違反。専属管轄の違反。口頭弁論の公開の規定の違反。判決に理由が付いていない、あるいは理由に食違いがある場合。この4つです。公開主義の違反は、上告理由にはなりますが、再審の事由ではありません。公開、双方審尋、直接の3つの原則のうち、再審で争えるのは、直接主義違反と、言い分を述べる機会を奪う双方審尋主義違反の2つだけです。前者は1号、後者は3号の系統で扱います。原則を並べた回では、3つまとめて再審の対象と言いましたが、正確には、公開主義の違反は入りません。なぜ外れるのか。さっきの2つの束で測ると、こう説明できます。公開されずに審理された場合も、専属管轄に違反した場合も、当事者が主張し立証する機会は、奪われていません。判断の材料が、犯罪などでゆがんだわけでもありません。だから、上告で言える間は言えても、確定したあとまで既判力を破る理由にはならない。上告理由の方が広いのは、そのためです。

4号〜8号の板(4号判決に関与した裁判官が事件について職務に関する罪を犯した=収賄など/5号刑事上罰すべき他人の行為により自白をするに至った又は判決に影響を及ぼすべき攻撃防御の方法の提出を妨げられた/6号判決の証拠となった文書その他の物件が偽造又は変造されたものだった・証拠となった電磁的記録が不正に作られたものだった/7号証人・鑑定人・通訳人・宣誓した当事者等の虚偽の陳述が判決の証拠となった/8号判決の基礎となった裁判や行政処分が後の裁判や行政処分で変更された/いずれも4号〜7号は有罪判決等の確定が要る・338条2項) 図:4号〜8号の板

  • 4号判決に関与した裁判官が事件について職務に関する罪を犯した=収賄など
  • 5号刑事上罰すべき他人の行為により自白をするに至った又は判決に影響を及ぼすべき攻撃防御の方法の提出を妨げられた
  • 6号判決の証拠となった文書その他の物件が偽造又は変造されたものだった・証拠となった電磁的記録が不正に作られたものだった
  • 7号証人・鑑定人・通訳人・宣誓した当事者等の虚偽の陳述が判決の証拠となった
  • 8号判決の基礎となった裁判や行政処分が後の裁判や行政処分で変更された
  • いずれも4号〜7号は有罪判決等の確定が要る・338条2項

2つめの束の前半、4号から8号です。条文を読みます。

条文民事訴訟法338条1項

民事訴訟法338条1項4号〜8号(再審の事由) 四 判決に関与した裁判官が事件について職務に関する罪を犯したこと。 五 刑事上罰すべき他人の行為により、自白をするに至ったこと又は判決に影響を及ぼすべき攻撃若しくは防御の方法を提出することを妨げられたこと。 六 判決の証拠となった文書その他の物件が偽造され若しくは変造されたものであったこと又は判決の証拠となった電磁的記録が不正に作られたものであったこと。 七 証人、鑑定人、通訳人又は宣誓した当事者若しくは法定代理人の虚偽の陳述が判決の証拠となったこと。 八 判決の基礎となった民事若しくは刑事の判決その他の裁判又は行政処分が後の裁判又は行政処分により変更されたこと。

4号は、判決に関与した裁判官が、その事件について職務に関する罪を犯したこと。たとえば、当事者から賄賂を受け取った場合です。5号は、刑事上罰すべき他人の行為によって、自白をするに至ったこと、または、判決に影響を及ぼすはずの攻撃防御の方法を出すのを妨げられたことです。5号は、前に見た、自白の撤回が許される例外とつながっています。他人に脅されて自白させられたような場合は、撤回が許される例外でした。確定したあとでも、同じ発想で救済する、という位置づけです。6号は、判決の証拠になった文書などが、偽造や変造されたものだった場合です。判決の証拠になった電磁的記録、つまりデータが、不正に作られたものだった場合も、6号に入ります。7号は、証人や鑑定人、通訳人、宣誓した当事者などが、うその陳述をして、それが判決の証拠になった場合です。8号は、判決の基礎になった裁判や行政処分が、あとの裁判や行政処分で変更された場合です。4号から7号には、共通の条件があります。次の2項です。

4号〜7号と有罪判決の要求の板(338条2項=4号から7号の事由は罰すべき行為について有罪の判決若しくは過料の裁判が確定したとき又は証拠がないという理由以外の理由により有罪の確定判決若しくは過料の確定裁判を得ることができないときに限る/例=偽証をした証人に偽証罪の有罪判決が確定→入口を通れる/犯人が死亡して起訴できない・公訴時効が完成した→証拠がないという理由以外の理由→入口を通れる/証拠不十分で不起訴・無罪→入口を通れない) 図:4号〜7号と有罪判決の要求の板

  • 338条2項=4号から7号の事由は罰すべき行為について有罪の判決若しくは過料の裁判が確定したとき又は証拠がないという理由以外の理由により有罪の確定判決若しくは過料の確定裁判を得ることができないときに限る
  • 例=偽証をした証人に偽証罪の有罪判決が確定→入口を通れる
  • 犯人が死亡して起訴できない・公訴時効が完成した→証拠がないという理由以外の理由→入口を通れる
  • 証拠不十分で不起訴・無罪→入口を通れない

条文です。

条文民事訴訟法338条2項

民事訴訟法338条2項(有罪の判決等の要求) 2 前項第四号から第七号までに掲げる事由がある場合においては、罰すべき行為について、有罪の判決若しくは過料の裁判が確定したとき、又は証拠がないという理由以外の理由により有罪の確定判決若しくは過料の確定裁判を得ることができないときに限り、再審の訴えを提起することができる。

4号から7号は、いずれも犯罪行為が絡む事由です。その場合は、その罰すべき行為について、有罪の判決か、過料の裁判が確定していることが要ります。ここで一問です。なぜ、有罪の確定判決まで求めるのでしょうか。民事の裁判所が犯罪の有無をゼロから調べ直さずに済むように、という説明が、趣旨として挙げられます。再審の入口の段階で、犯罪があったかどうかの審理まで始めると、重くなり、判断も不安定になります。そこで、刑事の確定した判決などを入口に置いて、事由の存在を確かなものにしています。もう一つ、後半の「又は」以下です。有罪の判決を得られない場合でも、証拠がないという理由以外の理由なら、入口を通れます。たとえば、犯人が亡くなって起訴できなかった場合や、公訴時効が完成した場合です。一方、証拠が足りなくて不起訴や無罪になった場合は、通れません。犯罪の証拠が足りないのなら、再審の事由としても、立証できていないからです。

9号・10号と3項・339条の板(9号判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があった=主張された重要な事項への判断が落ちていた/10号不服の申立てに係る判決が前に確定した判決と抵触する=同じ事件に矛盾する2つの確定判決/重複起訴を看過して確定してもそれだけでは再審事由にならない/矛盾する確定判決がそろった場合は後の判決に10号/338条3項=控訴審で本案判決をしたときは第一審の判決に再審の訴えを提起できない/339条=判決の基本となる裁判に独立の不服申立ての方法があっても再審の事由にできる) 図:9号・10号と3項・339条の板

  • 9号判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があった=主張された重要な事項への判断が落ちていた
  • 10号不服の申立てに係る判決が前に確定した判決と抵触する=同じ事件に矛盾する2つの確定判決
  • 重複起訴を看過して確定してもそれだけでは再審事由にならない
  • 矛盾する確定判決がそろった場合は後の判決に10号
  • 338条3項=控訴審で本案判決をしたときは第一審の判決に再審の訴えを提起できない
  • 339条=判決の基本となる裁判に独立の不服申立ての方法があっても再審の事由にできる

残りは、9号と10号です。

条文民事訴訟法338条1項

民事訴訟法338条1項9号・10号(再審の事由) 九 判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと。 十 不服の申立てに係る判決が前に確定した判決と抵触すること。

9号は、判決に影響を及ぼすはずの重要な事項について、判断が落ちていた場合です。当事者が主張した重要な事項が、判決の理由で取り上げられないまま、見過ごされていたようなときです。10号は、同じ事件について、矛盾する確定判決が存在する場合です。ここで、重複起訴の話を思い出してください。同じ事件を二重に起こすことは禁じられていますが、裁判所がそれを見過ごして、判決が確定してしまったとします。それだけでは、再審の事由になりません。ところが、矛盾する2つの確定判決がそろってしまったときは、後の判決が、この10号で再審の対象になります。最後に、細かい2つです。338条3項。控訴審で本案の判決をしたときは、第一審の判決に対して、再審の訴えを提起できません。争うなら、控訴審の判決に対してです。339条は、判決の基本となった裁判について、独立の不服申立ての方法があっても、再審の事由にできる、という定めです。この2つは、条文で確認する程度で足ります。

3号の広がり——手続関与の機会を奪われたとき

Bさんの事案と3号の板(前訴=A社が原告・Bさんが被告/Cが訴状を受け取り隠した→補充送達は有効/実際には本人に交付されず・本人は訴訟を知らないまま判決/問い=補充送達が有効でも338条1項3号の再審事由はあるか/3号の本来の形=代理権を欠いたまま訴訟が進んだ場合・当事者本人が手続に関わる機会を奪われた点が核心) 図:Bさんの事案と3号の板

  • 前訴=A社が原告・Bさんが被告
  • Cが訴状を受け取り隠した→補充送達は有効
  • 実際には本人に交付されず・本人は訴訟を知らないまま判決
  • 問い=補充送達が有効でも338条1項3号の再審事由はあるか
  • 3号の本来の形=代理権を欠いたまま訴訟が進んだ場合・当事者本人が手続に関わる機会を奪われた点が核心

Bさんの事案に戻ります。その前に、送達のところで見たことを思い出してください。補充送達は、受け取った同居者と本人の間に、事実上の利害の対立があるにすぎない場合に、有効でしたか、無効でしたか?有効でした。ただ、実際に書類が渡らず、本人が知らないまま判決がされたときは、再審事由があるかどうかを、別に判断するんでした。Bさんの事案が、まさにそれです。Cさんが受け取った訴状の送達は、補充送達として有効でした。Cさんは、Bさんの名前で借り入れをした張本人で、Bさんとの間に、利害の対立があります。実際に、訴状も判決書も、Bさんに渡りませんでした。そこで、再審の事由はあるのか、が問題になります。3号の条文は、代理権を欠いた場合です。Cさんは、Bさんの代理人として訴訟をしたわけではありません。そのままでは、3号に当たらないようにも見えます。最高裁の決定は、こう述べました。

判例最決平19・3・20 民集61巻2号586頁

補充送達は有効でも、再審事由の存否は別に判断する 本件訴状等の送達が補充送達として有効であるからといって、直ちに民訴法338条1項3号の再審事由の存在が否定されることにはならない。同事由の存否は、当事者に保障されるべき手続関与の機会が与えられていたか否かの観点から改めて判断されなければならない。……当事者の代理人として訴訟行為をした者が代理権を欠いた場合と別異に扱う理由はないから、民訴法338条1項3号の再審事由があると解するのが相当である。

判旨の細かい読み方は、送達の回で見ました。今日は、確定したあとの側から、この決定を受けます。決定の言葉は、「適用する」でも「類推適用する」でもありません。「代理権を欠いた場合と別異に扱う理由はない」。この言い方のまま、覚えてください。既判力の根拠に戻って考えます。既判力は、当事者に手続に関わる機会が保障されていたから、結果に拘束されてよい、という理屈で正当化されるのでした。代理権を欠いたまま進んだ訴訟で、本人が拘束されないのは、本人が手続に関わる機会を、実質的に奪われたからです。ところが、Bさんは、訴状も判決書も見ていない。訴訟があること自体を知らない。手続に関わる機会を奪われたことは、代理権を欠いた場合と変わりません。機会を与えられなかった人に既判力を維持する根拠は、弱いのです。これは、決定がそう書いているわけではなく、既判力の根拠から考えた説明です。決定が述べている決め手は、手続関与の機会が与えられていたか否か、の一点です。境目を並べます。Bさんと同じように、Cさんと利害が対立していても、訴状がBさんに実際に渡って、Bさんが裁判を知っていたのに、放っておいたとします。この場合は、手続関与の機会は与えられていました。3号の再審事由にはなりません。同居者との利害の対立、書類が実際に渡らなかったこと、本人が知らないまま判決がされたこと。この3つがそろえば、機会を奪われたといえます。

3号の広がりの板(代理権を欠いた=本来の形・本人が手続に関わる機会を奪われた/補充送達が有効でも同居者と本人に事実上の利害対立・書類は実際に交付されず・本人は知らないまま判決=別異に扱う理由はない→3号の再審事由/理由づけ=既判力の根拠は手続保障・機会を与えられなかった者に既判力を維持する根拠は弱い/境目=書類が実際に渡り本人が裁判を知っていた場合は機会が与えられていた/上訴との分担=追完で上訴を取り戻せるうちは上訴・確定して追完も間に合わないなら再審) 図:3号の広がりの板

  • 代理権を欠いた=本来の形・本人が手続に関わる機会を奪われた
  • 補充送達が有効でも同居者と本人に事実上の利害対立・書類は実際に交付されず・本人は知らないまま判決=別異に扱う理由はない→3号の再審事由
  • 理由づけ=既判力の根拠は手続保障・機会を与えられなかった者に既判力を維持する根拠は弱い
  • 境目=書類が実際に渡り本人が裁判を知っていた場合は機会が与えられていた
  • 上訴との分担=追完で上訴を取り戻せるうちは上訴・確定して追完も間に合わないなら再審

同じ「知らないまま判決を受けた人」でも、上訴との分担があります。付郵便送達、つまり書留郵便で発送した時点で届いたことにする送達や、公示送達で、知らないまま判決を受けた人は、97条の追完で、控訴の期間を取り戻せる場合がありました。追完で上訴を取り戻せるうちは、上訴。確定してしまい、追完も間に合わないなら、再審です。確定前の追完と、確定後の再審という分担です。もう一つ。当事者の一方に、言い分を述べる機会がまったく与えられなかったような場合、つまり双方審尋主義に反する場合も、手続関与の機会を奪われたという点で、3号の系統で扱います。1つめの束、つまり手続に関わる機会そのものが崩れた場合は、結果に拘束してよい前提が、根元から崩れています。3号の広がりは、その一番はっきりした形で、短答でも論文でも問われます。次は、いつまでに起こさなければならないか。期間です。

再審の期間——30日・5年・制限のない場合

再審期間の比較板(30日=判決の確定後に再審の事由を知った日から・不変期間・裁判所は伸縮できない96条1項ただし書・責めに帰することができない事由なら追完できる97条/5年=判決が確定した日(事由が確定後に生じたときはその発生日)から・不変期間ではない除斥期間・追完の対象にならない/制限なし=338条1項3号の事由のうち代理権を欠いたこと・10号/342条) 図:再審期間の比較板

  • 30日=判決の確定後に再審の事由を知った日から・不変期間・裁判所は伸縮できない96条1項ただし書・責めに帰することができない事由なら追完できる97条
  • 5年=判決が確定した日(事由が確定後に生じたときはその発生日)から・不変期間ではない除斥期間・追完の対象にならない
  • 制限なし=338条1項3号の事由のうち代理権を欠いたこと・10号
  • 342条

期間の前に、前に見た内容の確認です。不変期間は、裁判所が伸ばしたり縮めたりできない期間でした。では、当事者の責めに帰することができない事由で、その期間を守れなかったとき、どうなりますか。追完ができました。事由がなくなってから1週間以内に、本来の訴訟行為をすれば間に合う、という扱いでした。97条でした。それを頭に置いて、342条を読みます。

条文民事訴訟法342条

民事訴訟法342条(再審の期間) 第三百四十二条 再審の訴えは、当事者が判決の確定した後再審の事由を知った日から三十日の不変期間内に提起しなければならない。 2 判決が確定した日(再審の事由が判決の確定した後に生じた場合にあっては、その事由が発生した日)から五年を経過したときは、再審の訴えを提起することができない。 3 前二項の規定は、第三百三十八条第一項第三号に掲げる事由のうち代理権を欠いたこと及び同項第十号に掲げる事由を理由とする再審の訴えには、適用しない。

1項です。判決の確定後に、再審の事由を知った日から30日。しかも不変期間です。裁判所は伸縮できず、責めに帰することができない事由があれば、追完ができます。2項は、5年です。判決が確定した日から、5年を経過したら、再審の訴えは出せません。確定後に生じた事由なら、その事由が発生した日からです。ここが大事で、5年は、不変期間ではありません。追完の対象にならない、除斥期間です。たとえば、病気で動けなかったという、責めに帰することができない事情があっても、5年が過ぎると、もう出せません。30日は追完の余地があり、5年は動かない。この差を、短答では問われます。3項が、例外です。338条1項3号の事由のうち、代理権を欠いたことと、10号の事由を理由とする再審の訴えには、1項も2項も適用されません。期間の制限がないのです。

趣旨として、こう説明されます。代理権を欠いたまま進んだ訴訟は、本人が、自分の知らない間に確定していることがあります。本人が知る機会がなかったのに、期間で切ってしまうのは酷です。10号は、矛盾する2つの確定判決が並び立った場合です。期間の制限は、法的安定のためにありました。ところが、矛盾する確定判決が2つあると、どちらに従えばよいかが決まらず、何年たっても安定は戻りません。期間で切れば、その不安定な状態が、かえって固定されてしまいます。だから、いつでも解消できるようにしてあります。

Bさんの時間軸(前訴の判決が確定→3年後に差押えの通知でBさんが知る→知った日から30日以内に再審の訴えを提起すれば1項を満たす・確定から5年以内なので2項も満たす/もし確定から8年後に知った場合=2項の5年が経過・3項が除くのは文言上は代理権を欠いたこと・Bさんの型(同居者から本人に書類が渡らなかった)に3項が及ぶかは決定は述べていない) 図:Bさんの時間軸

  • 前訴の判決が確定→3年後に差押えの通知でBさんが知る→知った日から30日以内に再審の訴えを提起すれば1項を満たす・確定から5年以内なので2項も満たす
  • もし確定から8年後に知った場合=2項の5年が経過・3項が除くのは文言上は代理権を欠いたこと・Bさんの型(同居者から本人に書類が渡らなかった)に3項が及ぶかは決定は述べていない

Bさんの事案で考えます。判決の確定から3年後に、差押えの通知で知ったとします。Bさんは、知った日から30日以内に、再審の訴えを起こせば、1項を満たします。確定から5年以内ですから、2項も満たします。もし、確定から8年たってから知ったら、どうなるんですか。そこは、慎重に分けて考えます。条文の3項が期間の制限を外すのは、字面のうえでは、代理権を欠いたことです。Bさんの型、つまり、同居者に渡って本人に届かなかった型は、代理権を欠いたことそのものではありません。3項がこの型にも及ぶかどうかは、条文の字面からは、断定できません。先ほどの決定も、期間については何も述べていません。代理人と称する者が権限なく訴訟をした場合のような、代理権を欠いたことそのものなら制限なし。同居者型は、決定が答えていない。この2つを、分けて持っておいてください。もう一つ、30日と5年の両方が掛かる例を見ます。前の貸金請求で、証人がうそをつき、それが判決の証拠になって負けたとします。7号の事由です。この場合は、事由を知った日から30日と、確定から5年の、両方の関門を通らなければなりません。どちらか一方が過ぎると、再審の訴えは出せません。ここで立ち止まって、1つ問いです。Bさんの事案で、30日と5年の期間は、効いてくるでしょうか。

3年後に知ったのなら、知った日から30日以内に出せば足ります。5年は、まだ経っていないので問題になりません。

再審の補充性——上訴で言えたことは言わせない

補充性の板(338条1項ただし書=当事者が控訴若しくは上告によりその事由を主張したとき・又はこれを知りながら主張しなかったときは再審できない/趣旨=濫訴の防止・勝訴した当事者の地位の安定/Bさんの事案=訴訟を知らなかった→知りながらではない・訴状も判決書も同居の兄止まりで上訴で主張する機会がなかった/変形=判決書を自分で受け取り事由を知りながら控訴しなかったBさん→再審できない側/再審は最後の手段・他の道で足りるものは再審にしない=強迫による取下げ・和解) 図:補充性の板

  • 338条1項ただし書=当事者が控訴若しくは上告によりその事由を主張したとき・又はこれを知りながら主張しなかったときは再審できない
  • 趣旨=濫訴の防止・勝訴した当事者の地位の安定
  • Bさんの事案=訴訟を知らなかった→知りながらではない・訴状も判決書も同居の兄止まりで上訴で主張する機会がなかった
  • 変形=判決書を自分で受け取り事由を知りながら控訴しなかったBさん→再審できない側
  • 再審は最後の手段・他の道で足りるものは再審にしない=強迫による取下げ・和解

338条1項のただし書に戻ります。当事者が控訴か上告でその事由を主張したとき、または、その事由を知りながら主張しなかったときは、再審ができません。再審の補充性といいます。理由は二つ挙げられます。一つは、濫訴の防止です。上訴で言えたことを、あとから何度でも持ち出せるなら、確定の意味がなくなります。もう一つは、勝訴した当事者の地位の安定です。勝った側は、確定を信じて暮らしています。その信頼を、相手が言えるのに黙っていたことで崩してはいけない。喩えの建物でいえば、検査のときに気づけた欠陥は、引渡しのあとで言わせない、ということです。Bさんの事案に当てはめます。Bさんは、訴訟があることさえ知りませんでした。訴状も判決書も、同居の兄のところで止まっていて、Bさんには届いていません。上訴で、3号の事由を主張する機会がそもそもなかった。だから、「知りながら主張しなかった」には当たりません。補充性の壁は、越えられます。境目になる変形を置きます。もし、Bさんが判決書を自分で受け取って、自分の知らない借金の裁判で欠席扱いになったことを知りながら、控訴をしなかったとします。この場合は、事由を知りながら主張しなかった側に入ります。同じ事由でも、知っていたか、知る機会があったかで、結論が分かれます。再審は最後の手段、という性格は、ほかの場面にも出てきます。強迫によって訴えを取り下げさせられた場合、5号を類推して救済できますが、判決ではないので、再審の訴えではなく、期日指定の申立てで足りる、と前に見ました。他の道で足りるなら、そちらを使います。また、和解に既判力を全面的に認めると、再審事由がなければ争えなくなってしまいます。再審の入口が狭いことが、和解の効力の議論の背景にありました。

再審の手続——2段階の構造

再審の手続フロー(管轄=不服の申立てに係る判決をした裁判所の専属・340条1項/審級を異にする裁判所が同一事件についてした判決は上級の裁判所が併せて管轄・340条2項/訴状に当事者と法定代理人・不服の対象の判決・再審を求める旨・不服の理由を記載・343条/第1段階=再審開始の可否・決定手続で口頭弁論は前提としない=不適法なら却下決定345条1項・事由がなければ棄却決定345条2項(確定すれば同一事由で再度の再審の訴えは不可345条3項)・事由があれば相手方を審尋して再審開始決定346条/これらの決定に即時抗告347条/第2段階=本案の審理=再審開始決定が確定したら不服申立ての限度で審理裁判348条1項・判決が正当なら請求棄却348条2項・不当なら取り消してさらに裁判348条3項) 図:再審の手続フロー

  • 管轄=不服の申立てに係る判決をした裁判所の専属・340条1項
  • 審級を異にする裁判所が同一事件についてした判決は上級の裁判所が併せて管轄・340条2項
  • 訴状に当事者と法定代理人・不服の対象の判決・再審を求める旨・不服の理由を記載・343条
  • 第1段階=再審開始の可否・決定手続で口頭弁論は前提としない=不適法なら却下決定345条1項・事由がなければ棄却決定345条2項(確定すれば同一事由で再度の再審の訴えは不可345条3項)・事由があれば相手方を審尋して再審開始決定346条
  • これらの決定に即時抗告347条
  • 第2段階=本案の審理=再審開始決定が確定したら不服申立ての限度で審理裁判348条1項・判決が正当なら請求棄却348条2項・不当なら取り消してさらに裁判348条3項

最後の問い、手続です。再審の訴えは、どの裁判所に起こすのか。不服の申立てに係る判決をした裁判所の、専属管轄です。340条1項です。Bさんの事案なら、前の訴訟でA社の勝訴判決をした裁判所です。審級を異にする裁判所が、同一の事件についてした判決に対しては、上級の裁判所が、併せて管轄します。2項です。再審の訴訟手続には、その性質に反しない限り、各審級の訴訟手続に関する規定が準用されます。341条です。再審の訴えは、訴状を出して起こします。訴状には、当事者と法定代理人のほか、不服を申し立てる判決と、その判決に対して再審を求める旨と、不服の理由を書きます。343条です。本題は、ここからの2段階です。名前は「再審の訴え」ですが、いきなり前の訴訟の続きをするわけではありません。第1段階の条文です。

条文民事訴訟法345条・346条

民事訴訟法345条・346条(再審の訴えの却下等・再審開始の決定) 第三百四十五条 裁判所は、再審の訴えが不適法である場合には、決定で、これを却下しなければならない。 2 裁判所は、再審の事由がない場合には、決定で、再審の請求を棄却しなければならない。 3 前項の決定が確定したときは、同一の事由を不服の理由として、更に再審の訴えを提起することができない。 第三百四十六条 裁判所は、再審の事由がある場合には、再審開始の決定をしなければならない。 2 裁判所は、前項の決定をする場合には、相手方を審尋しなければならない。

第1段階は、再審を開始するかどうかの判断です。ここは決定手続で、口頭弁論は前提としていません。再審の訴えが不適法なら、決定で却下します。345条1項です。再審の事由がなければ、決定で再審の請求を棄却します。2項です。この棄却の決定が確定したら、同じ事由を理由にして、もう一度、再審の訴えを起こすことはできません。3項です。事由があるなら、相手方を審尋したうえで、再審開始の決定をします。346条です。これらの決定には、即時抗告ができます。347条です。訴えなのに口頭弁論をしない、というのが落とし穴です。名前は訴えですが、第1段階は決定で終わります。口頭弁論を想像しないでください。なぜ、わざわざ2段に分けるのか。趣旨として、こう説明されます。事由があるかどうかを、先に決定で確かめておけば、事由のない訴えのために、確定した判決の中身を蒸し返す審理に入らずに済みます。勝った側の、確定判決への信頼を守るための関門です。本案の審理に進む条文です。

条文民事訴訟法348条

民事訴訟法348条(本案の審理及び裁判) 第三百四十八条 裁判所は、再審開始の決定が確定した場合には、不服申立ての限度で、本案の審理及び裁判をする。 2 裁判所は、前項の場合において、判決を正当とするときは、再審の請求を棄却しなければならない。 3 裁判所は、前項の場合を除き、判決を取り消した上、更に裁判をしなければならない。

第2段階が、本案の審理です。再審開始の決定が確定したら、不服の申立ての限度で、本案の審理と裁判をします。348条1項です。ここでようやく、前の訴訟の口頭弁論が、再開されて続きます。審理の結果、前の判決が正当なら、再審の請求を棄却します。2項です。正当でなければ、判決を取り消して、さらに裁判をします。3項です。再審事由があっても、前の判決が結論として正当なら、判決は維持される。再審事由があることと、請求が認められることは別です。

Bさんの事案で2段階を通す板(第1段階=Bさん(再審原告)が前の訴訟をした裁判所に再審の訴え→3号の事由ありと判断→A社(再審被告)を審尋→再審開始決定/第2段階=開始決定が確定→前の訴訟の口頭弁論が再開→Bさんが借りていないと争う→A社が立証できなければ前の判決を取り消して請求棄却/注意=再審の訴えだけでは強制執行は止まらない・執行停止の裁判を別に求める403条1項1号/刑事の再審は刑事訴訟法の別の制度) 図:Bさんの事案で2段階を通す板

  • 第1段階=Bさん(再審原告)が前の訴訟をした裁判所に再審の訴え→3号の事由ありと判断→A社(再審被告)を審尋→再審開始決定
  • 第2段階=開始決定が確定→前の訴訟の口頭弁論が再開→Bさんが借りていないと争う→A社が立証できなければ前の判決を取り消して請求棄却
  • 注意=再審の訴えだけでは強制執行は止まらない・執行停止の裁判を別に求める403条1項1号
  • 刑事の再審は刑事訴訟法の別の制度

Bさんの事案に通します。Bさんが、前の訴訟をした裁判所に、再審の訴えを起こす。裁判所は、3号の事由があると判断して、A社を審尋したうえで、再審開始の決定をする。決定が確定したら、前の訴訟の口頭弁論が再開される。Bさんが、自分はお金を借りていないと争う。A社が借りたことを立証できなければ、前の判決を取り消して、Bさんの勝ちの判決をする。こう進みます。一点、注意があります。再審の訴えを起こしただけでは、強制執行は止まりません。止めたいなら、執行停止の裁判を、別に求めます。403条1項1号です。執行の手続は、民事執行法の領域です。刑事の再審は、刑事訴訟法に定められた、別の制度です。名前が同じだけで、混ぜないでください。

第三者の救済——詐害再審

事案②の関係図(X=Xさん・株主で前訴の原告/D=D社・前訴の被告/F=Fさん・D社の新株を引き受けた第三者/XがD社を被告に新株発行の無効を求める訴え・D社は争わず請求を認めて敗訴・確定/Fさんは前訴の存在を知らされない/会社法838条=確定判決の効力は第三者にも及ぶ/Fさんは前訴の当事者ではない/問い=当事者でない第三者のFさんはどう救済されるか) 図:事案②の関係図

  • X=Xさん・株主で前訴の原告
  • D=D社・前訴の被告
  • F=Fさん・D社の新株を引き受けた第三者
  • XがD社を被告に新株発行の無効を求める訴え・D社は争わず請求を認めて敗訴・確定
  • Fさんは前訴の存在を知らされない
  • 会社法838条=確定判決の効力は第三者にも及ぶ
  • Fさんは前訴の当事者ではない
  • 問い=当事者でない第三者のFさんはどう救済されるか

もう一つ、第三者の救済です。別の事案を使います。株主のXさんが、D社を被告にして、D社が発行した新株の発行の無効を求めて、訴えを起こしました。新株発行無効の訴えは、被告になれるのは会社だけです。ところが、D社は、まったく争わず、Xさんの請求を認めて、敗訴し、判決が確定しました。実はXさんとD社は、馴れ合っていたとします。新株を引き受けていたのは、Fさんです。Fさんは、前の訴訟の存在を知らされていません。ところが、会社の組織に関する訴えで請求を認める確定判決は、会社法838条により、第三者にも効力が及びます。Fさんの新株は、Fさんの知らないところで、無効にされてしまいました。

Fさんは、前の訴訟の当事者ではないですよね。再審の訴えを起こせるんですか。そこが問題です。実は、馴れ合いの訴訟で第三者が害される場合の救済を、一般的に定めた条文は、現行法にありません。かつての法律にはありましたが、削除され、現行法も引き継いでいません。この穴に、最高裁の決定が一つの答えを出しました。決定は2段で考えています。1段目は、再審の訴えを起こす資格、原告適格の問題です。再審の訴えを起こしただけでは、当事者ではない第三者は、確定した判決の判断を左右できません。しかし、独立当事者参加の申出をすれば、再審開始の決定が確定したあと、参加人として訴訟行為をして、合一確定の要請を通じて、確定判決の判断を左右できます。合一確定とは、矛盾なく一つの判断に定めるべきだ、という要請です。しかも、再審開始の決定がされれば、訴訟の審理がされることになるので、参加の申出に必要な訴訟係属もあるといえます。なぜ、参加すると判断を左右できるのか。独立当事者参加は、第三者が自分の請求を掲げて、3人目の当事者として入る手続でした。入ったあとは40条が準用されて、3人のうち1人を除け者にして、他の2人だけで訴訟を動かすことはできません。前に見た、牽制の規律です。Fさんが参加人として入れば、XさんとD社が馴れ合って争わなくても、それだけでFさんに不利な結論を固めることはできなくなります。整理します。Fさんは、再審の訴えを起こすだけでなく、独立当事者参加の申出を、あわせてすることで、確定判決の判断に手を届かせることができる、という道筋です。

判例最決平25・11・21 民集67巻8号1686頁

第三者は独立当事者参加の申出をして再審の訴えを起こせる 新株発行の無効の訴えに係る請求を認容する確定判決の効力を受ける第三者は、上記確定判決に係る訴訟について独立当事者参加の申出をすることによって、上記確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有することになるというべきである。……上記株式会社による訴訟活動がおよそいかなるものであったとしても、上記第三者が後に上記確定判決の効力を一切争うことができないと解することは、手続保障の観点から是認することはできないのであって、上記株式会社の訴訟活動が著しく信義に反しており、上記第三者に上記確定判決の効力を及ぼすことが手続保障の観点から看過することができない場合には、上記確定判決には、民訴法338条1項3号の再審事由があるというべきである。

決定の言葉で確かめます。「上記株式会社」はD社のような被告の会社、「上記第三者」はFさんのような立場の人です。1段目が原告適格、2段目が3号です。

第三者再審の決定の板(1段目=原告適格=再審の訴えを提起するだけでは当事者でない第三者は確定判決の判断を左右できない・独立当事者参加の申出をすれば再審開始決定の確定後に参加人として訴訟行為をして合一確定の要請を介し確定判決の判断を左右できる・再審開始決定がされれば訴訟の審理がされるので参加申出に必要な訴訟係属もある/2段目=3号の再審事由=会社が訴訟を追行している以上第三者が訴訟係属を知らず関与の機会を与えられなくても直ちには3号の再審事由があるとはいえない・信義則2条・被告適格を与えられた会社は事実上第三者に代わって手続に関与する立場・会社の訴訟活動が著しく信義に反しており第三者に効力を及ぼすことが手続保障の観点から看過できない場合は3号の再審事由がある・本件はそうみる余地があるとして原決定を破棄し差し戻した) 図:第三者再審の決定の板

  • 1段目=原告適格=再審の訴えを提起するだけでは当事者でない第三者は確定判決の判断を左右できない・独立当事者参加の申出をすれば再審開始決定の確定後に参加人として訴訟行為をして合一確定の要請を介し確定判決の判断を左右できる・再審開始決定がされれば訴訟の審理がされるので参加申出に必要な訴訟係属もある
  • 2段目=3号の再審事由=会社が訴訟を追行している以上第三者が訴訟係属を知らず関与の機会を与えられなくても直ちには3号の再審事由があるとはいえない・信義則2条・被告適格を与えられた会社は事実上第三者に代わって手続に関与する立場・会社の訴訟活動が著しく信義に反しており第三者に効力を及ぼすことが手続保障の観点から看過できない場合は3号の再審事由がある・本件はそうみる余地があるとして原決定を破棄し差し戻した

2段目は、3号の再審事由です。Fさんは、前の訴訟に出る機会を与えられていません。それなら3号の事由がある、とすぐに言えるでしょうか。決定は、そうは言いませんでした。会社が訴訟を追行している以上、第三者が訴訟があることを知らず、関与の機会を与えられなくても、直ちには3号の再審事由があるとはいえない、という立場です。ただし、そこで終わりません。信義則です。2条です。新株発行無効の訴えで被告になる資格を与えられた会社は、事実上、第三者に代わって手続に関与する立場にあります。その会社の訴訟活動が、著しく信義に反していて、判決の効力を第三者に及ぼすことが、手続保障の観点から看過できない場合には、3号の再審事由があるといえる、としました。そのうえで、この事案は、そう見る余地があるとして、原決定を破棄し、審理を差し戻しています。

決定は、再審事由があると確定したのではなく、存在するとみる余地がある、と述べて、差し戻しました。結論を、言い過ぎないことが大事です。決定が、そう見る余地があるとした事情は、こうです。第三者は、訴訟が起きる前から、会社に対して新株発行が有効だと主張していて、訴訟を知れば参加してくることが明らかでした。会社もそれを分かっていました。それなのに、会社は請求をまったく争わず、訴訟があることを知らせるのも簡単だったのに、知らせませんでした。Fさんの事案に当てはめます。D社は、Xさんと馴れ合って、まったく争わず、Fさんにも知らせませんでした。これが、著しく信義に反する訴訟活動だといえれば、Fさんには3号の再審事由があります。逆に、決定は、会社が訴訟を追行している以上、第三者が訴訟を知らなかったというだけでは、直ちに3号の事由があるとはいえない、としていました。決め手は、会社の訴訟活動の中身です。Fさんがする独立当事者参加は、前に見た整理でいえば、訴訟の結果で権利を害される第三者が、馴れ合いを止めるために加わる、詐害防止参加の型に近い場面です。ただし、違いがあります。独立当事者参加の回で見た第三者は、判決の効力が及ばない人で、事実上の不利益を防ぐために、確定の前に入りました。Fさんは、838条で、確定した判決の効力そのものが及ぶ人です。しかも判決は確定済みなので、参加の申出だけでなく、再審の訴えとあわせて入ります。なお、3号を広げたこの判断は、新株発行無効の訴えを前提にした事案の判断で、第三者再審の一般的な要件を述べたものではありません。

ここまでをつなげます。判決の効力が、手続に出ていない人にまで及ぶ。その構造は、判決の効力が及ぶ人の範囲を見た回や、訴訟担当で見た場面と同じです。また、補助参加人なら、参加している訴訟の中で、再審の訴えを提起できます。45条1項です。Fさんは、前の訴訟に参加していません。そのFさんについて、決定は、独立当事者参加の申出をすることで、再審の訴えの原告適格を持つ、と述べました。第三者再審は、論文で論点になりうるところです。

今日の地図(保存版)

Bさんの線の総括(確定後に差押えの通知で知る→前訴の裁判所に再審の訴え=訴状/事由=3号(同居者との利害対立・書類が渡らず知らないまま判決・手続関与の機会が与えられていなかった)/期間=知った日から30日の不変期間・確定から5年(確定から3年)/補充性=知らなかったので知りながら主張しなかったに当たらない/手続=第1段階の決定手続で相手方を審尋して再審開始決定→第2段階で前訴の口頭弁論を再開し本案をやり直す→判決を取り消してBさんが勝訴/4つの持ち帰り=1限定列挙・期間・補充性・2事由は2つの束・3期間30日と5年と例外・4手続は2段階と詐害再審) 図:Bさんの線の総括

  • 確定後に差押えの通知で知る→前訴の裁判所に再審の訴え=訴状
  • 事由=3号(同居者との利害対立・書類が渡らず知らないまま判決・手続関与の機会が与えられていなかった)
  • 期間=知った日から30日の不変期間・確定から5年(確定から3年)
  • 補充性=知らなかったので知りながら主張しなかったに当たらない
  • 手続=第1段階の決定手続で相手方を審尋して再審開始決定→第2段階で前訴の口頭弁論を再開し本案をやり直す→判決を取り消してBさんが勝訴
  • 4つの持ち帰り=1限定列挙・期間・補充性・2事由は2つの束・3期間30日と5年と例外・4手続は2段階と詐害再審

冒頭の問いに答えます。判決が確定したあとで、訴訟を知ったBさんは、どうするか。前の訴訟の判決をした裁判所に、再審の訴えを起こします。事由は3号です。同居の兄と利害が対立していて、書類が渡らず、知らないまま判決がされた。手続に関わる機会が与えられていませんでした。期間は、知った日から30日の不変期間と、確定から5年。確定から3年なので、5年は満たします。上訴で主張する機会もなかったので、補充性の壁も越えます。手続は、まず決定手続で、A社を審尋して再審開始決定。確定したら、前の訴訟の口頭弁論が再開されて、Bさんが借りていないことを争う。こう進みます。4つ、振り返ります。1つめ、再審は、確定した判決の既判力を破る非常手段で、だから、事由は限定列挙、期間は短く、上訴で言えたことは言わせません。2つめ、事由は、手続の土台が崩れた1号から3号と、判決の基礎が崩れた4号から10号の、2つの束です。4号から7号は有罪の判決などの確定が要ります。3つめ、期間は、知った日から30日と、確定から5年。代理権を欠いたことと10号には、制限がありません。4つめ、手続は2段階で、第1段階は決定手続、第2段階で本案をやり直します。第三者の救済は、独立当事者参加の申出と、3号です。

第5章の全体地図(確定前の救済=上訴=控訴・上告・抗告・期間内にすれば確定を遮る116条2項・限定された上告理由や抗告の道/確定後の救済=再審=確定した終局判決を取り消す・準再審は即時抗告で争える決定命令/事由は限定列挙338条/期間は30日と5年・3号の代理権を欠いたことと10号は制限なし342条/補充性338条1項ただし書/2段階の手続は決定手続→本案/上訴で言えたことは再審では言わせない=2つの救済のつなぎ目) 図:第5章の全体地図

  • 確定前の救済=上訴=控訴・上告・抗告・期間内にすれば確定を遮る116条2項・限定された上告理由や抗告の道
  • 確定後の救済=再審=確定した終局判決を取り消す・準再審は即時抗告で争える決定命令
  • 事由は限定列挙338条
  • 期間は30日と5年・3号の代理権を欠いたことと10号は制限なし342条
  • 補充性338条1項ただし書
  • 2段階の手続は決定手続→本案
  • 上訴で言えたことは再審では言わせない=2つの救済のつなぎ目

最後に、第5章を1枚の地図に畳みます。判決が確定する前の救済が、上訴です。控訴、上告、判決でない裁判に対する抗告。期間内にすれば、判決の確定を遮ります。確定した後の救済が、再審です。確定した判決を壊す手続ですから、事由は限定列挙、期間は30日と5年、上訴で言えたことは言わせない。そして、手続は、開始の可否を決める決定手続と、本案をやり直す審理の、2段階です。確定の前と後で、同じ「判決を直す」ことが、まったく違う厳しさで扱われる。その差の正体は、既判力でした。上訴は既判力が生まれる前に直す手続。再審は、一番強い効力を例外的に破る手続です。

参照条文

  • 民事訴訟法338条1項
  • 民事訴訟法338条2項
  • 民事訴訟法342条
  • 民事訴訟法345条・346条
  • 民事訴訟法348条

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